歴史改変SFと憧憬の絶妙なバランス「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」
<SF(127歩目)>
正統派的な歴史改変SFで、読み込むとパラレルワールドを違和感なく読み込ませるための工夫を感じます。
グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船
高野 史緒 (著)
早川書房
「127歩目」は、平行世界を描くための準備が周到、とても参考になる作品です。
母が、高野史緒さんと同じ高校出身。母の青春時代の土浦市の雰囲気がとてもうまく出ていると同窓会でも話題とのことで、なんと老母に勧められた作品です。
普段はSFなんか読まない母ですから、「ご当地SF的」な作品なのかな?と思ったのですが、いい意味で裏切られました。
途中までパラレルワールドの話とは気づかかった。
「ムジカ・マキーナ ハヤカワ文庫JA」で感じていたのですが、歴史(時間)を描く際の公証が半端ないです。「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」のあとがきにも触れていられますが、夏紀と登志夫のパラレルワールドを描く際に、それぞれの年表を作成しているようです。
だから、矛盾が生じないのか!?とアタリマエのことですが、とても感心しました。
すごく丁寧です。
私の母は、土浦二高にまつわる箇所が同級生と話題になったとのことでしたが、親孝行で母とあるいた土浦、そして亀城公園付近。とても、うまく描けていて「聖地巡礼」のファンも満足すると思いました。
色々なパラレルワールドを描く中で、旧ソ連を描いていることも、高野史緒さんワールドですね。
ソ連時代のモスクワを経験していないと描けない箇所、そして「あのままソ連が続いていたら」に思いをはせ、「絶対」と思われていたものも、崩壊することはあり。故に、歴史に「if」があると、地球においてもこんなパラレルワールドを描くことが出来ることが新鮮でした。
それにしても、パラレルワールド作品は読み進む中で感じる「微妙なずれ」「微妙な違和感」ですね。
「微妙」なことが重要で、そこで生きる人間の感情に大きな相違ない。故に、パラレルワールドでの「愛(love)」が美しく描けるのだと思いました。
とても丁寧な作品です。
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