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エキゾチックなラノベ「無限の書」

<SF(157歩目)>
馴染みのないペルシャ湾の首長国を舞台にしたサイバーパンク

無限の書
G・ウィロー・ウィルソン (著), 引地 渉 (イラスト), 鍛治 靖子 (翻訳)
東京創元社

「157歩目」は、G・ウィロー・ウィルソンさんによる、もっとも私にとって馴染みのない世界でのサイバーパンク恋愛もの。

国全体が石油によるマネーで潤っているために、貧しさとは縁がないが貧富の差が激烈についている世界。ここで、貧しい若者がテクノロジーで武装をして日々を暮している。

ここまでは「あるね」と感じたが、主人公は徹底的なオタクであり、引きこもりでもある。自宅から出ないで、Web空間で出会った女性と恋愛関係になる。ここまではやはり「あるね」と感じた。
しかし、設定が私たちの知る平等世界ではなく、「貴族」と「平民」と分かれた世界だと話は別物になる。

この生きづらさが強い社会で、貧しい主人公は悪戦苦闘を続ける。この前半がエキゾチックだけど、とても長い。しかし、中東を舞台にしたSF好きにはたまらない。この最初の描写に、知られていない世界のエキゾチックを強く感じたが、ここで挫折すると後半の早い展開までたどり着けない。

国が豊かだが、専制国家だとちょっと私たちの想像を超えた世界があるので、感情移入が難しいのではないか?と感じていたが、何しろ置かれた環境は馴染みないが、恋に関しての悩みは同じ。

主人公の悪戦苦闘は、エキゾチックな文化と親和性よくて、読ませてくれる。

最初から、身近にいる異性が真の理解者で大切にしないといけないとすぐわかるが、それに気づかない主人公のコミュ障ぶりがオモシロい。

中東を舞台にしたSF作品、幻想作品は今まで多く読んできましたが、「重力が衰えるとき ジョージ・アレック・エフィンジャー 早川書房」「ロボットの夢の都市 ラヴィ・ティドハー 東京創元社」よりも、はるかにリーダビリティがいいので、中東のエキゾチックなSF作品のとっかかりとしてはいいかもしれない。

個人的には、「深み」は「ロボットの夢の都市 ラヴィ・ティドハー 東京創元社」。「読みやすさ」は「無限の書 G・ウィロー・ウィルソン 東京創元社」でした。

それにしても、ジン (幽精≒精霊)って、幻想文学と親和性がいい。日本の八百万の神々に悪意が入った存在に感じた。

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