中国史SFってすごい「中国史SF短篇集-移動迷宮」
<SF(128歩目)>
中国史を題材としたSFを中国史SFと呼ぶらしいのですが、時と場所が重要なファクターになっている素晴らしい短篇集でした。
中国史SF短篇集-移動迷宮
大恵 和実 (編集, 翻訳), 上原 かおり (翻訳), 大久保 洋子 (翻訳), 立原 透耶 (翻訳), 林 久之 (翻訳)
中央公論新社
「128歩目」は、歴史を把握してのSF作品。中国史の雄大さがSFにマッチしています。8篇ですが、中華SFの凄さを再認識させられました。
「南方に嘉蘇あり 馬伯庸」
考察がとても緻密で、私が大好きな「石黒達晶さん」のスタイルに似ている。何時の間にか、珈琲(嘉蘇)の話に引き込まれている。
コーヒーの伝播と焙煎・飲み方の発達について、徹底的にこだわり「陰陽」までこの物語で納得している自分がいた。このスタイルは、高野史緒さんに近い。ものすごく事前準備が周到な作品だと思いました。
「時の祝福 宝樹」
この短篇集では一番すきな作品です。魯迅は故郷でH・G・ウェルズのタイムマシンに出遭う。親友とともに、一人の中国史の中で埋もれてしまう女性を救うために、歴史改変に取り組む。この結果がとても面白い。
宝樹さんらしく、切なく刺さる作品。この作品だけでも、私は満足だと感じた。素晴らしい。
「一九三八年上海の記憶 韓松」
かすかに記憶の中を刺激された作品。デジャヴではなく、私たち自身が経験していないこと(例えば、私にとっては第二次世界大戦は生まれる前)を読み手に興味深く知らしめるのに、この様な手法があったのか!?と感じました。
勿論、1938年の上海は、生まれるずっと前ですが、リアルを私に与えました。テクニカルですが、この短篇から学ぶところは多いと感じた。
中国史も興味深いが、日本史でインスパイアされた作品が出てくるとおもしろいです。
「永夏の夢 夏笳」
夏笳さんと立原透耶さんのペアは安定です。
中華SFを読んでよかったと思う素晴らしい作品です。
そしてSF者ならば、巻末の「編者解説 中国史SF迷宮案内 大恵和実」が見逃せません。いや、とても深い世界でした。かなり読み込んでいますが、まだまだ足りません。大恵和美さんの発信にもこれからも注目です。
撰者のセレクトが素晴らしい。とても豊かな時間を過ごせました。
大恵和美さん、ありがとうございました。
次も期待しています。
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