予想を完全に覆す結末に衝撃を受ける「NSA」
<SF(7歩目)>
予定調和型のアメリカ・日本的でなく、ヨーロッパ的な結末に衝撃を受ける。(アメリカSFでは、こうはならない!)
NSA 上
アンドレアス エシュバッハ (著), 赤坂 桃子 (翻訳)
早川書房
NSA 下
アンドレアス エシュバッハ (著), 赤坂 桃子 (翻訳)
早川書房
「7歩目」はドイツから。歴史改変SFの王道のテーマの第二次世界大戦ものから、「技術」と「愛(love)」を学ぶ。
作者のアンドレアス・エシュバッハさんは邦訳が少ないのですが、ドイツを代表するSF作家です。わずかな邦訳のものでも、「イエスのビデオ」とこの作品は素晴らしいです。
歴史改変ものを得意とされていて、この作品は「第二次世界大戦中のドイツにインターネットと携帯電話があったら!」という設定で話が進みます。
ここまで書くと、ナチスドイツの強烈な世界を想像してしまい、「こんな作品であろう」と想像しがち。でも、単細胞な私とは違い、エシュバッハさんは予想もできない結末にいざなってくれます。
主人公のヘレーネに感情移入していたので、打ちのめされるくらい衝撃でした。
さて、この長編を読んで痛切に感じたこと。
ドイツ人作家で、ドイツ語で発表したので「ナチスドイツ」を取り扱っている。
おそらく、ドイツの読者の中には「ナチスドイツ」だから、究極に過激であっても「あり得るね」との同意形成されていたのだと思うのですが、ドイツ以外の国々でも高い評価を受けている原因が「グロテスクなまでに徹底する集団が主導権を握った世界」を想像させるからです。
(どこの国でも条件が揃えばあり得るディストピア社会)
読後感じたのは、ジョージ・オーウェルさんの有名なディストピア小説「1984」を超える全体主義国家にかかわる回答があると思いました。
究極に官僚的な世の中になった際に、私たちが扱う「技術」はカンタンに「愛(love)」を踏みにじってしまいそうです。便利になったからこそ、技術以外の動きにも注意喚起の作品です。おススメです。
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