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詩「玉乗り」


球体は美しくも懐かしい
永遠に手に入れられないものは
胸の中でゆらゆら揺れる
不安定に欲望を掻き乱す
定まらない心は一片の推進力となる

球体の上に乗ると見え方も変わる
空気の味も一度ひとたび違う
足元はくるくると定まらない
安定こそ つまらない
仕立て上げた虹は汗の香りがして美しい

僕は世界を作り出す
涙の淵に人々の笑顔を見る
乾いた道の上に声が弾ける
転んだ痣は いつかは癒える
人を傷付けない嘘は
ゆっくりと沁みながらも広がっていく
もはや
それこそが素晴らしい

だから僕は今日も
震えながらも玉の上に乗る
掴めない空気を
掌で必死に握り締めながら

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