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詩「タイムトンネル」


緑のトンネルの先に
自分が生まれた故郷を見る
木々の隙間から零れる光が
私の心を反射する
鳴き止まない蝉時雨が
季節の居場所を告げる

あの夏
生命は生温い水の中を泳いでいた
空気の泡を吐きながら
安寧と渇望を抱きながら
若い生命は歓びに震えていた

79年の間に生まれ
この生命は争いを知らなかった
自然の雨に濡れたら
太陽の光で乾かした
土の上に弾丸が転がることもなく
透明な雫が流れ落ちる

私の過去現在に戦いの歴史はない
今ならば
まだ
あの夏に帰れるのだ
無垢で純粋な 生きる為だけの夏に

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