詩「笑えない」
僕の番になって空気は突然凍り付く
口角は上がらない
視線は哀しく宙を漂う
光でホコリが白く浮かび上がる
髪の毛先に次々とグレーが絡んでくる
避ける間もなく
年の数だけ降り積もる
今更 それを
掬い上げる事もなく
音は澱んで揺れ動く
僕の声は上擦った後に
掠れていった
伝えたい言葉は時の隙間に
どんどん流されていく
止まらない
止められない
積み重なった優しさ達は
呆気なく時代の果てに消えて行ったのか
僕が手を振って
別れを惜しむ前に
正義のフリしたナイフは
いつだって異様に鋭い
痛む前に僕の動きを止める
事前に用意した言葉達は
腹の奥に沈めるしかなかった
浮上はしない
潰される
続きを制止される世の中
僕はAIじゃない
空も まだ偽物じゃないのに
胃の底がキリキリと鳴く
笑えない
笑えない
こんな グレーな世の中