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詩「円」


この歳になっても
ちっとも
思い通りにいきません

どこまでも続く一本道
スッと生きていく筈だった
(凛として。)
細かい分岐がありすぎて
感情がこの体には収まりきりません
もやがかかって先も見えない
晴れ渡っている筈だった
この道は
(思い悩んでいる人間は背中が丸まり 小さく小さく縮こまっています。)

心は まぁるく和らいでいる予定でした
算数のテスト
コンパスで描いた円の様に
子供時代
落書き帳に鉛筆で書いた円は
どれもみな歪んでいた
(風邪の時 悪夢でみた魚の吹いた泡みたい。)
ぷかぷかと
楕円に広がり消えて行く…

それでも 私にはお似合いだと思った



凛として そびえ立っていた形は
儚くも崩れ去っていく…

隙がない完璧な円周率で
平和としあわせの美学を描いていた
ふんわりとした優しさに包まれ
流れていた甘い時間

紅茶の香りが鼻の奥をくすぐる
優雅が極まる
思わず顔もほころぶ
嬉しさと幸福が混ざり合う
絶頂のハーモニー

それなのに
曲がった形に切り取られ
ぐにゃりと横に倒れた
それからは
元の姿が分からない位に
ぐじゃぐじゃになって
最後は乱暴に口の中に消える

私達は
いつも
最初は綺麗な円を描いているのだ

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