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詩「渇望」



乾ききった地面は水をなかなか吸収しない
恵みの雨すら横滑りしていく

やっと蕾をつけた花は
茶色くなって枯れた
それが運命だと周囲に示しているかの様に

地面に倒れた旅人は
生を求めていた
地面を見つめる瞳は
ギラギラと燃えていた
自身を焦がす光線よりも熱く
瞳の中だけが多少の水分で満たされていた

(こんな所で終わってはなるものか…。)
乾いた唇の上を血は踊る
全身で生を求めていた

旅人は知らなかった
自身は砂の上の一つの点だと
風で砂が舞い上がり
命など 簡単に覆われてしまう事も…

旅人は手を伸ばす
この旅が続こうとも
終わろうとも
欲しいものを求める為に
人間は欲望の底から生まれてきたのだ




希望の光も上から何度も黒く塗られ続ければ
二度と元には戻らない
だからこそ
私は
死ぬまで手を伸ばし続ける事が出来る
暗闇の中から誰の目にも触れられ無い
私だけの光を見る

望みを叶えた者達が置いたペンを取り
新しい言葉を綴る
認められる事は
何か特別な意味を持たない
それよりも
途中で命を投げ出さず続ける事が大事じゃないか?

何度もありもしない光景を見た
永遠に掴めないからこそ
敢えて言葉にする
何度も何度も繰り返す

皺の刻まれた手で誰かが投げ出したペンを取り
黒い紙の上に誰も読み取れない言葉を
私だけの表現で書く
意味が無い事に意味を見出す
それは
一部のごく限られた人間にしか出来ない
宇宙の黒さを知っている者だけにしか
決して許されていないのだ

永遠に潤わない喉を鳴らしながら
誰かが投げ出した思考の続きをノートに書く
そこに大した意味は無い
(大それた意味は もっと無い。)
しかし飢えた熱が在る
何日も食事を摂れていない痩せたライオンが放つ熱が
サバンナから遠く離れた私の心の中にも在るのだ

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