原宿版OMO="OMT"とは
コロナ禍の最中、原宿は大きな変革を遂げていた――
こんにちは。新卒2年目カスタマーセンターの子です。
先日、原宿に鎮座する現役最古の木造駅舎が、取り壊しに向けモダンな新駅舎へと装いを新たにしました。
そして、その向かいにオープンした原宿の新名所が「WITH HARAJUKU」。
全14店舗からなるショップ&レストランをはじめ、上層階には賃貸レジデンスを兼ね備えた複合施設です。
そしてこのWITH HARAJUKUの目玉とも言えるのが、1階に隣り合うようにネオンサインを掲げる、「IKEA」の都心型店舗国内初出店と8年ぶりに原宿に返り咲いた「ユニクロ」の出店。
感染対策に万全を期し、入口の制限・入場時の検温を徹底する中でのオープンとなりました。
実際に足を運んだ私の視点で、現場ルポを交えつつ「WITH HARAJUKU」を紐解いていこうと思います。
そこに見え隠れするのは、流行の発信地・原宿に現れた"NEO-Harajuku"に表出化される新たな潮流でした。
真隣の地で閉店に追い込まれた、GAPという存在
WITH HARAJUKUが建設されたのはかつて「原宿アパートメンツ」という居住施設があった場所、その地にかねてから根を下ろしていたOSHMANSはリニューアルしてWITH HARAJUKUの中に再オープンする事になりました。
一方、この真隣の地で長年原宿のシンボルとなっていたGAPの旗艦店は既に撤退しており、現在では@cosme(アットコスメ)の旗艦店になっています。
形を変え原宿駅前の地に生き続ける者がいる一方、時代の流れの中で廃れこの地を去り行く者がいる。
片や同じくSPAを生業とするユニクロは、一度原宿の地を去ったものの返り咲きの再出店。
そして郊外で大成功を収めているIKEAは、満を持しての都心初挑戦。
原宿という地は、かねてから若者の流行の発信地として栄え、流行り廃りの多い街として出店ブランドの入れ替わりも激しい場所ですが、
ただ「若者向けブランド」というだけではこの地で生き残るのはなかなか難しいという事を物語っています。
若者に親しみのある(手の届く価格帯の)ジャンル・ブランドである事はもちろん不可欠の条件ではあるものの、
ただ、「安い」という価格戦略だけでは高額な土地代をペイできないし、
ただトレンドなだけでは、すぐ廃れてしまう。
・若者に親しみがあるものの、普遍的にニーズのあるカテゴリのブランド
・圧倒的な品揃え
・良いものを、リーズナブルに提供せよ
今も原宿の地に残る大型ショップには、こうした共通点があります。
もちろん、それはユニクロやIKEAだけではありません。
WITH HARAJUKUの両隣りに出店する@cosme・KAMO然り、竹下通りのダイソー然り、大型ショップはご多分に漏れず上記に当てはまるのではないでしょうか。
OMO (Online Marges Offline)は当たり前である
今回WITH HARAJUKUの目玉出店とされている「IKEA」と「ユニクロ」に共通するのが、「デジタルのフル活用」。
ですが、「デジタルシフト」「オムニチャネル」って、もはや当たり前になりつつあるのではないかなと思います。
この2店舗の特徴として、実際に私が行ってみてスゴイなと感じたのは、
「地域ニーズありきでデジタルをフル活用できている事」かなと思います。
まず、IKEA。
店内に入ると、「思ったより狭いな」という印象を持つと思います。
郊外型店舗の印象が強いIKEA。広大なスペースを活用した陳列プレゼンテーションがウリなだけに、「そりゃあ郊外店舗に比べたら小さいはずだよな」と思った上で入店したのですが、
それにしても狭い。 (あくまで個人の見解です)
IKEA最大の見せ場である、部屋丸ごとの提案「ルームセット」も、他の郊外型店舗に比べるとかなり小型です。
ただ、これこそが「原宿」という地におけるマーケットフィットなのでは?と思わされたのです。
郊外型店舗に来る「夫婦・ファミリー層」だと、30代前後の方がターゲットになる可能性が高くなりますが、一方原宿に出店した事でターゲットの年代層が10代~20代へと若くなります。
渋谷・原宿が流行の発信地となる彼らは、郊外に比べ「密集」「雑多」に慣れています。かえって郊外型店舗のように広々した空間で休み休み、丸一日かけて店内を回るような設計より、馴染みやすく感じられたのです。
さらに、都心の間取りは郊外より小さいので、その「狭さ」がかえって彼女たちの生活空間を想像しやすくさせるようにも思わされますし、
そのまま原宿・渋谷をショッピングするならその場で買って帰らないので、オムニチャネルとの親和性も高い。まさに考え抜かれた「狭さ」のように思えました。
少し本筋とは外れますが、スタバが道路に面した位置ではなく「IKEAの出口の先の、奥まった場所にある」というのも、「スマホ片手にフラッと立ち寄って、そのまま通り抜けてフラペチーノ片手に原宿へ」という計算し尽された動線のように思えて仕方なかったのです。
続いて、ユニクロ。
ユニクロ原宿店には、目玉エリアとして着こなし発見アプリ「スタイルヒント(StyleHint)」と連動した世界初の売場「StyleHint原宿」があります。
壁一面に配置されたタブレットからスタイルヒントに投稿された着こなしが表示され、気になる着こなしがあれば画面をタッチするだけで着用商品検索やオンライン購入まで完結できてしまうのが特徴です。
流行の最先端・原宿に「服を買いに来ている人」という事は、流行に敏感な人である可能性が高い訳で、
言い換えると、「他者の着こなし・他者の意見を(自分流に)取り入れたい」という欲求がある人が多いはずなのです。
そのニーズそのものを、店舗の特徴に変えてしまったという遊び心が、ユニクロ原宿店のスゴさなのかなぁと感じました。
原宿版OMO="OMT"
今までは原宿駅竹下口改札を出れば目の前に竹下通りが広がっていました。
逆に言うと、表参道に向かう人と竹下通りに出る人では原宿駅の改札時点で明確に区分けがされていたという事です。そもそものターゲットが異なるだけでなく、一度表参道に出てしまうと竹下通りになかなか出にくかったという地理的理由も影響していました。
その結果、表参道と竹下通りの間には明確なカルチャー差が存在していたと言えます。
しかし今回完成したWITH HARAJUKUでは竹下通りへの道が整備されます。
つまり、原宿駅の表参道側出口からWITH HARAJUKUを抜けて竹下通りに出るという新たなルートが確立されるという事です。
こうなると、人の流れが変わり、通行人の求めるものも変化していきます。
勿論、今後も竹下口から直接竹下通りに向かう層は残ると思われますが、WITH HARAJUKUに出店しているショップに興味を持つような、竹下ナイズされてない層まで竹下通りに抜けてくる頻度が増えていくかもしれません。
つまり、今までは「表参道」「竹下」「裏原」という3つの流行が(比較的明確に)棲み分けられていた「原宿トレンド」から、
表参道派・裏原派の竹下流入増により竹下トレンドがマージされていく事を通じて、竹下トレンドがマイルドになっていく可能性が考えられます。
先程も取り上げた、ユニクロ原宿店世界初の売場「スタイルヒント原宿」に、早くもその片鱗を見る事ができます。
つい壁一面のタブレット画面に目が行ってしまいますが、ここで見てほしいのはこの売場の商品陳列方法。
通常のユニクロ店舗に比べ商品の展開位置が低く、展開商品を絞り、各単品にフォーカスしその商品の特徴を伝えるスペースを確保しています。
「雑多」「POP」といった印象の竹下トレンドに対し、この陳列方法は「高級」「良質」「ファッション性」といったイメージの強い表参道トレンドに近い気がしませんか?
OMO (Online Marges Offline)はもやは当たり前のものとして、ただデジタルシフトして満足するのではなく、しっかりとその店舗に来店する人のニーズを考えた上で、その人達を最大限満足させるためのツールとしてデジタルをフルに活用していく。
その結果として、今まで「表参道」「竹下」「裏原」という異なる3つのトレンドを持ち合わせていた原宿という地を、オンラインが統合し、新たなトレンドへと発展させていく。
そんな世界があるのでは?と、思わされたのでした。
原宿版OMO・OMT (Omotesando Marges Takeshita)こそ、新たな原宿の向かう道なのかもしれない。
そんな"NEO-Harajuku"の片鱗に、気づかされたのでした。
P.S.
奇しくも、原宿版OMOが「OMT(OMoTesando maeges takeshita)」と結論付けられた時点で、既に原宿という街は表参道にマージされてしまっているのかもしれません。