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アンチョビーのおまけ



今年もきました、しこいわしの季節。
旬はこれから。
盛夏まで楽しめます。
横須賀、猿島沿岸の朝獲れです。

ぴちぴちと音がしそうに新鮮なしこいわし。
春に美味しい小さな生しらすが、初夏にはここまで育ちます。
そして冬には、子孫繁栄を祈ってお節の田作りに。
昔から、日々の暮らしやこうしたお祝い事に欠かせない魚として、我々日本人とともにある魚なのだと改めて気づきました。

目も口も大きく、口の形に特徴があります。
なんとも愛らしい顔をした、小さなカタクチイワシ。

“七回洗えば鯛の味”と言われる、イワシの刺身。
開いてそのまま刺身でも十分美味しいけれど、
今回はイタリアの海水塩を使い、アンチョビーに。

手開きに向くサイズのいわしですが、
アンチョビーにするなら、
うろこをさっと取って包丁で三枚に下ろし、
流水でなく、ためた塩水で良く洗って水けをふいて、という仕事ができていると、
あとで出来る魚醤も
何の臭みもなく、ギュッと旨味がうつっておいしく仕上がります。

梅干しの際の梅酢と同じように、
作った時だけにもらえる、うれしいごほうび。

塩はイワシの正味の2割ほど。
サラサラの精製塩の場合は、
しっかり量った方が良いですが、
結晶塩はゆっくり溶けてゆくので、そんなに厳密でなくて大丈夫です。

身と身の間には薄~く塩を振り、
最後はイワシが隠れるほど残りの塩でうずめて、
冷蔵庫で1~2か月熟成します。

これはつけたてです。

7日後。まだまだ塩が溶けていないのですが、
出来つつある魚醤がすでにおいしく、
ついついなめてしまいました。

14日後。熟成が進みました。こんな感じです。

2か月なんて待ちきれず、
やっと1か月後の今朝、塩から引き上げました。

魚醤と身に分け、
身は、3%ほどの塩水で洗い、汁気をしっかり拭いて、
清潔な小さい保存瓶にきっちり詰め
かぶるまでオイルを注ぎます。

オリーブ油だけだと冷蔵庫で固まりがちなので
少しずつ長く使えるように、
米油と半々にし
竹串などでしっかり身の間の空気も抜き、
このまま冷蔵庫で熟成します。

あと1か月ほどで完成!

魚醤は、滅菌した清潔な瓶で冷蔵保存しつつ、熟成。
こちらはすぐ使えるので、あれこれ使い倒します。

おまけのごほうびの、この魚醤。
ナムプラーよりも風味やわらかく、
熟成が浅い分、香りもフレッシュなので、
エスニックな料理以外にも、
きんぴらのような和の煮物にも、深みを与えてくれました。

イタリアにもコラトゥーラという魚醤がありますが、ナンプラーよりもマイルドに使えます。

この愛すべきおまけの魚醤は、かなりの使いでがあり、愛おしい存在。
トマトにもよ~くなじみます。

トマトはさすが。
もつでも、光りものでも。
くせの強いものをうま~く包み込むのが、得意です。

他にも、このおまけ、
あらゆる料理にパンチを利かせてくれるので、楽しいのです。
塩分も強いので、少しずつ、たいせつに。




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秋の栗、葡萄、冬のリンゴ、味噌、そして初夏のしこいわし、梅干し、らっきょう…

私のやる気スイッチ、ここにあり。
毎年、呆れるほどにそう感じます。

その時気持ちが弱っていたとしても、
無心に皮をむいたり、じっくり煮込んだりさばいたりしているうちに
知らず知らずに元気をもらい、
なんとなく前を向けていて、
毎年のさまざまなことも
ひょいっと乗り越えられて来たんじゃないかな、と。

詰め終わった瓶を並べつつ、そんなこと思いました。


おまけが嬉しいだけかも、知れないけれど…。






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