魚貝を漬ける。
十五夜のお月見、そしてお彼岸を過ぎると、
今年もまたお決まりのように暑さは形を潜め、
朝に晩に、涼しさが増してきました。
夕陽と追いかけっこするように運転しながら帰宅していると、日毎暗くなるのが早まっていくのを感じます。
そうして車窓から夕暮れ空を眺めているうちに
不意に昔のことを思い出したりして。
片付けたい仕事がまだ残っていても、
(ああ、そろそろ保育園や学童保育のお迎えに行かなければ)
(寂しがっていないかな、そもそも間に合うかな…)などと、
ずんずん早まる日暮れに、気もそぞろ。
時間の経過はいつもと同じながら、日中の短さに
ついつい心が急いてしまう頃がありました。
もう何十年も前のことなのに
決まって秋口になると、なぜかそんなことが脳裏に蘇り、懐かしくてたまらなくなります。
今のわたしにはたっぷり時間があって、
納得いくまで準備もできて、
仕事終わりの食事のお誘いも断らずお付き合いできるようになりました。
当時もこんなふうに仕事に全ての時間を使えていたら、今よりもっと活躍できていたかも知れませんが、
それでも、たくさんの人に助けられて過ごした、綱渡りのようなあの日々が有り難く思えてならないのです。
そんな思い出に耽溺しがちな、
ひとりの秋の夜長。
涼しくなり、魚や貝をあれこれつけて愉しむ元気も復活してきたようです。
市場で安く仕入れた
ビンナガマグロと帆立貝柱を漬けてみました。
まずはビンナガマグロ。ビンチョウともいいますね。
小さなさっぱりしたマグロで、どうしてもホンマグロやインドマグロに比べると勝ち目はないけれど、
漬けると俄然、美味しくなります。
漬けにしようか迷い、
半分は醤油と煮切り酒で漬けにし、半分は粕漬けにしました。
粕床は、酒粕 300gに白味噌30gを混ぜて酒を大さじ3強ほど加えて柔らかくし、砂糖大さじ3強と塩を小さじ1ほど混ぜて作ります。
面倒な場合は、魚久などの粕漬けについてくる粕床を残して使っても。
マグロが新鮮だったので、
当初焼くつもりだったのを少し切り取ってつまみ食いしてみたら、
無駄な水気が抜けて、すごくいい滋味が備わっていました。
うれしくなって
漬け地を少しつけたまま、全部刺身で頂くことに。
日本酒にぴったりです。
帆立は、塩麹で漬けておき、こちらは軽く焼きました。
うちで塩麹を作り始めたのは、
忘れもしない、東日本大震災の直前でした。
あの頃ちょうど塩麹がすごく話題になり、
塩麹を使った仕事も増えていた頃、でした。
時の流れはあまりにも早いです。
ブームの後、今は熟成した市販品も買えますが、
うちで作れば自分の好みの塩の強さに出来て簡単です。
もうみなさんご存知かもと思いますが…
*うちでつくる塩麹
材料
乾燥米麹 200g、塩60~75g、水1.5カップ
作り方
1、米麹はちぎって塩をなじませ、水を加え、
保存容器か保存袋に入れて常温で置きます。
蓋は少し開けておきます。
1~2日に一度混ぜて、とろりとしてきたら冷蔵庫で保存します。
保存袋だとモミモミするだけで楽です。
そのまま野菜のディップにしても、天ぷらやなべのつゆに加えても。
肉も魚も、漬けるだけで深みが加わります。
ぬか漬け代わりに野菜を漬けるのも。
ぬか漬けといえば…
ぬか床の調子が良い時に、ジッパー付きの袋にぬかを小分けして、ホタテやイカ、鯖など、魚を漬けるのもおすすめです。
ぬか味噌を洗い落とした後水気を拭き、
ホタテはそのまま刺身で。
するめいかは胴の中まで詰めたぬかをきれいに洗って水気を拭き、ニンニク入りオイルでレアに焼き、ワタも絡めて。
へしこ風に漬けたサバは、洗って水気を拭いて魚焼きグリルで焼き、すし酢を混ぜた大根おろしを添えるとさっぱりと良く合います。
夜に漬けて翌朝頂くとちょうど良いです。
昔の思い出から、どんどんと横道へそれて、
ぬか漬けにたどり着いてしまう私。
食欲以外にも、良い秋の過ごし方は沢山あるはずなんですが…。
せっかくの秋の夜長。
他にもさまざまに、好きなことや、前からやってみたかったことに向かってみるのも良いかもしれません。
季節の変わり目に体調を崩す暇もないほどに、
心身豊かに過ごせたらと願っています。
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