#詩
『還りみちを臨む、』 #教養のエチュード賞
わたしをはじめて包んでくれた温度のことを記憶にあるかと尋ねられればそれはすこし難しくて、その実のところはあなたに訊くのが正しいのだろうと思う。あるいはあなたもどうだろうか、夏が終わり秋の深まる気配が日々色濃くなるその頃から、あなたはわたしをどれだけ抱きしめてくれただろうか、どれだけ、包んでくれただろうか。はじめての記憶、それはひどく曖昧で、だからいつか答え合わせというか、ずっとずっと過ぎ去った昔の
もっとみるもう一つの「わたし」
最近、本名じゃないアカウントで発信する人の気持ちがなんとなくわかってきた。いいよね、もう一つのなまえ。
もう一つのなまえは、もう一つのことばをもっている。だから、もう一つの思考だし、もう一つの人格だから。フルスイングでくだらないことも言える。何より、もう一つの「わたし」には締切がないのだ。
じぶんが「じぶん」であることに疲弊する。じぶんが「じぶん」を消耗する。そんな時、もう一つのなまえにいのち
『エピローグ』 #ナイトソングスミューズ
でも、ほんとうは
彗星は、あなたであって
わたしだった
暗くて冷たい、とおいとおい雲のかなたからある日
わたしたちは旅をはじめた
わたしたちは、ずっと 旅をしていた
彗星の尾っぽにつかまって、わたしたち 旅をしてきた
そして 今、
燃え尽きた彗星は塵となり 残るのは、ふわり宇宙に
揺られ漂うふたり
宇宙の片隅で、肩を寄せあって そう、やっと
辿りついたのね
つかんでも逃げていく
世界でたったひ