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表現アーツセラピーってなに?

こんにちは、表現アーツセラピストのゆうきです。

今日は、私がどんな風に心の癒しを行なっているのか、表現アーツセラピーについてお話したいと思います。

私はもともとトークセラピーといって、ごくスタンダードな対面カウンセリングで行われる対話を通した心理療法を中心に学びました。対話中心にセラピーを行なってゆく中で、少し限界を感じたのと、私自身が表現すること、芸術を通して癒された経験があったので、クリエイティブセラピーと呼ばれる心理療法に興味が湧きました。数多くある心理療法の中でも、様々な芸術媒体を使う表現アーツセラピーという分野を知り、それを私自身が受けてみたところ・・「!!!」様々な変化があり「これだ!」という確かな感触。そして、その分野に入ってゆきました。

この分野を知る方はまだそんなに多くないと思います。心理カウンセリングや心理療法自体も、きっとまだまだイメージが湧かないかたもいると思います。そんな訳で、今日は表現アーツセラピーについてご紹介したいと思います。

表現アーツセラピーってなに?

表現アーツセラピーが始まったのが70年代。心理療法の中でもまだまだ歴史の浅い分野です。なので表現アーツセラピーと聞いても、あまりピンとこない方が多いと思いますし、アートというと「絵を描く」アートセラピーと思う方も多いと思います。勿論、表現アーツセラピー、アートセラピーといっても、オーバーラップする部分もあるので、共通項はたくさん。

表現アーツセラピーや、アートセラピー以外、音楽療法、ダンス・ムーブメントセラピー、ドラマセラピー(演劇)などがあり、それらを芸術療法、もしくはクリエイティブ・セラピーと呼びます。どのような媒体で心理療法をするのか?その媒体が違うだけで、心のプロセスにおいては、気づきや変化を促し、また内側の変化に伴に、外側に現れている症状や問題が減少する、と言うインサイドアウトなプロセス、というところで全て共通しています。

そんなわけで、表現アーツセラピーとは何か?特徴的な3点をあげてみました。

1)多様な表現様式を使うセラピー                  2)表現すること。                         3)解釈・分析がない。

1)多様な表現様式を使う

これがまずはじめに思いつく特徴です。多様な表現様式を使うというのが表現アーツ。例えばアートセラピーは視覚(ヴィジュアル)アート中心のセラピーですが、表現アーツセラピーは、視覚アート(絵画、粘土etc)だけではなく、ダンス・ムーヴメント、演劇(パペット、ピエロのワークなども含む)、音楽、ヴォイス、・サウンド、ライティング(物語作り、手紙、詩etc..)といった多様な表現様式を通して心のプロセスを促します。もちろん、その表現様式の取り入れ方は自由で、2−3違う様式を連続的に取り入れる時もあれば、一つにとどまったワークをする場合も。ただ、この多様な様式を使うという点で、とても特徴的だと思います。


例)まず今感じる心の葛藤を身体の動きで表現してみる。その動きをしている時に湧いてきたもの(感情でもイメージでも思い出でもなんでも)をしっかりと感じる。そして終わったらそれを絵に描く。その後、その絵を見て詩を書く(この例ではダンス・ムーヴメント、視覚アート、ライティングといった様式を通してプロセスしています)。

このように一つの表現から別の表現へ繋いでいきながら、その体験を通してセラピーを行う感じです。その場の雰囲気、その方にその時必要なものを、セラピストが直感的に感じ取って選んでゆきながら、様々な表現様式を使って心理療法、すなわち内なる対話を進めていきます。。

なので表現アーツセラピストによっては、それぞれの得意分野があると思うので、表現アーツセラピーといっても、実際には色んな形の表現アーツセラピーがあると思います。

2)表現すること

表現アーツセラピーは、自分を表現する部分、表現のプロセス、その過程に焦点をあてます。従って、アート作品を作ることに焦点は当てません。もちろん、プロセスをした結果、それが一つの作品になったりもします。しかし何かを作ろうと思って、アートの製作に入る訳ではありません。どちらかというと、その場の即興性を大事にしています。直感的というか、感覚的というか。その時感じたことを表現する。

そんなわけで、

自分の内から湧き出る感情、気持ち、思い、又その瞬間の感覚etc...そこから出てきたイメージを多様な芸術媒体で表現するという所に中心を置いています。それらの体験、プロセスを通して、気づきや癒し、心の対話が促され、また変革を起こしてゆくものです。

このように、何かを作る事でもありませんし、何らかの結果を目指して行うものではありません。すなわち芸術的スキルは全く必要としません。表現をするプロセス上で「間違い」という概念はなく、例えば、紙に点をかいても、ただの1本の線でも、その時に浮かんだイメージがそれだとしたら、その方にとって何かしら意味のあるイメージなのです。全て正解です。そして、その方の持つイメージや感覚の意味を探るのはクライアントさん自身。クライアントさんが意味を探りやすいようにガイドするのがセラピストの役目です。

出てきたイメージをガイドのもと、そのかたのペースで探りながら、結果的に何らかしらの形になることもあれば、それはその都度流れてゆくイメージでもあります。従来のアート作品作りとは全く違うプロセスになります。けれど、言葉にならない思いや感情、また記憶を表現する幅が広がることで、そのプロセス過程で、すでに癒されることもよくあります。より直感的に、より感覚的に。そのプロセスを重ねることで、自分自身を信頼する力、セルフ・コンパッションやレジリエンス(悩む力)もついてゆきます。

その他、ダンス・ムーヴメントにおいても、どちらかというと、“踊る”のではなく、足をまっすぐにのばしてみたら、どんな感じがするのか?手を左右に振ってみて、どんなイメージが湧くのか?楽しい時、どんなふうに身体が動くのか?など、やってみたりします。それで結果的に、何らかの動き、それがダンスに発展することもあります。

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とても直感的なので、このようなワークに抵抗を感じる事もあるかもしれません。例えば、不得意だと思っている場合。しかし、抵抗があったり、むしろ不得意だと思っていた方でもやってみると意外な発見があります。


そしてわざわざ不得意だと思っていたものをやる事で(いつもとは違うリスクを安全なセラピーの場でとる事で)、「不得意」と感じているコアの部分に触れる事ができ、そしてその体験を通して、不得意から解き放たれることもありますし、自分の制限の枠を広げることができます。私の場合、この分野に入るまで、詩なんて書いたことがないし、文章を書く事自体、不得意だと思っていました。しかし、やってみると案外とできちゃうもので(自分でも最初はビックリでした)、今では好きな表現媒体の一つです♩

3)解釈・分析がない

アートセラピーでは、時にアセスメントや分析があります。もちろん、これはこれでとても重要な分野です。現実的に見立てのために必要なケースもあります(アセスメントは、また別の分野になります)。しかし表現アーツセラピーのプロセスでは、アセスメントや分析はありません。その代わり、イメージとの対話があります。ここに、力を入れていると思います。

自分の内から湧いてきたイメージとの対話を通して、イメージがまた新たなイメージを生み、徐々に心のプロセスが深まってゆく。プロセスは、そのように感じています。あくまでも、その方から出てきたイメージは、その方にしか分からない意味や物語が背景にはあります。なので、その方(クライアント中心)が、イメージとの対話を進める事が一番良いというのは頷けますね。他者が、そのかたの物語を編集することなく、その方自身が書き上げてゆくのです。そこに大きな意味があると思います。それを見守るのはセラピストの役目です。安全な場所で、判断されることなく、自分自身との対話を進め、その時のテーマ、物語を完成させてゆくことができます。


表現アーツセラピストの創設者の一人である、ショーン・マクニフ(もともとはアートセラピー出身の方)は、解釈や分析を「イメージ・アビューズ」といっています。あるイメージや表現に対して一つの理論での解釈や分析を当てはめる事で、その他にある意味などが見えなくなってしまう、イメージから出る豊なメッセージを受け取る事ができなくなってしまうと言っています。

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表現アーツセラピーは....小さなお子さんから大人/老人まで、様々な文化背景、バックグラウンドの方、得意/不得意関係なく、全ての方に適してたセラピーだと思います。大人の方にとっては、どちらかというと子ども時代を思い出す事のできる(もしくは子ども心が活き活きし始める)、時にワクワクする心のワークでもあります。


子ども心ってとっても大事!

大人だからって子ども心がなくなったわけではありません。子どもの心を取り戻す事によって、人生がまた違った色に染まってゆき、新たな可能性の扉が開かれてゆきます。

どんな効果があるか?

普段言葉にしない気持ちや感情を様々な芸術媒体を通して表現してゆく中で、心との対話を促し、また芸術表現という枠の中で、今まで不得意だと思っていた(思い込んでいた)ことを安全な場でチャレンジすることで、今まであった自分の制限の枠が広がり、それにより新しい自分を発見するとともに、人生における選択肢も増えます。

そして内なる繋がりを深めてゆくプロセスという意味で、自己信頼感や自尊感情を高めることにも有効です。そう言ったプロセスの中で、外側に現れた様々な症状も自然に少なくなって行ったり、なくなったりします。内に働きかけることで、自然と外側も癒されるという、インサイドアウトなワークです。

セッションについて:現在、オンラインでもセッションを受け付けています。自分探し、親子の関係、トラウマの癒し、人間関係の悩み、その他落ち込みや不安など、心の癒しが必要な方、セッションを受けてみたい方は、いつでもご連絡ください。


参考:表現アートセラピー研究所                      ナタリー・ロジャースの文献(タイトル"what is expressive art therapy")

本:「表現アートセラピー入門」by 小野京子              「芸術と心理療法」 by ショーン・マクニフ(小野京子訳)       Pratica (2) アートxセラピー潮流(プラティカ(2)) 関則雄(編集)、井上リサ(編集)三脇康生(編集)、フィルムアート社編集部(編集)


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