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【ショートショート】幽霊になれなかった私〜after story〜
*まだの方はこちらを先に*
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「ねぇ、人間って何歳まで生きられるの? 」
まだ幼い私の問いに、祖母は「うーん。」と唸る。
「100歳くらいかなぁ? 」
そんな祖母の答えに私は目を輝かせて言った。
「ばあちゃん、じゃあよづき、100歳まで生きるね。」
その言葉に祖母は心底嬉しそうに微笑んだ。
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幽霊になれなかった私は、あれから毎日を生きた。
今までと変わらない毎日。
起きて、洗濯をして、ご飯を食べて、家族と二言、三言、会話してまた眠るだけの単調な毎日。
寝て、起きて、また寝て起きて、寝て、起きて・・・。
そんな日々。
ああ、でも変わったこともあったかな。
いつのまにか、"見つけて"もらえるようになった。
助けてもらえるようになった。
文字だけのこの世界で。
あの日、幽霊になって「私は消えたかったんじゃない。生きて誰かに見つけて欲しかったんだ」って思ったけれど、望みが叶った今でも時折消えたくなるのはなぜなんだろう。
「じゃあ、よづき100歳まで生きるね。」
そう言ったあの時も苦しみが無かったわけじゃないのに、なんでそう思えたのだろう。
なんで今は”間違い”を犯そうとしながら、それでも生きているのだろう。
人間にも幽霊にもなれず正体が定まらないまま、生きていくのは罪なのではないか。
生まれてきたくても生まれてこられなかった命。
生きたくても生きられなかった命。
こんな状態で生きていくのはそういった存在への冒涜なのではないか。
疑問が次々に沸き上がる。
でも、それでも。
薄い雲の隙間から太陽が顔を出し、うららかな日差しが私に降りかかった。
落ちたハンガー。
脱ぎ捨てたトレーナー。
そんな雑然としたフローリングの床に、もう1人の私、影が落ちる。
それでも今、私は生きている。
中途半端で不完全で、怒られてしまうかもしれないけれど、私は今日も生きている。
見つけてもらえた今、少なくとも幽霊ではないんだ。
辛くても、苦しくても私は今、生きている。
本当は何があってもなくてもそれだけで充分なんだね。
ね? そうでしょ?
私は同意を求めるように何もない空中を見上げた。
誰の返事もない。
ソイツがそこにいるように感じたのは、気のせいなのだろうか。
そう思った時、細く開いた窓の隙間からひんやりとした秋風が吹きこんできた。
その風は私の火照った頬を一瞬撫でると、瞬く間に窓の外へ飛び出していった。
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