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学習支援の諸問題

 2021年01月26日から
小中学生への学習支援で得た知見を基に
色々書き始めて136回目になりました。
 また、2021年03月15日から
毎週連続投稿を始めて133回目です。

 今回は、学習支援を現場で支えている立場から見える諸問題を整理してみようと思います。

1:運営組織
 学習支援を運営している組織は、個人の善意に支えられている場合から、NPO法人化された大規模なものもであります。

 どの運営体でも、一番問題になるのは資金!

 個人で運営する場合、場所や設備などにどうしても必要な資金がない!
 そのため、自宅を開放したり、地域で共同利用できるような場所や、地域センター・お寺や神社などを活用する場合が多いようです。
 また、学習参考書籍やコピーがないので、生徒の持ち込み資料を基に支援を始めているようですが、周囲の理解が集まると、こういった物品の寄贈があるようです。

 ある程度規模が大きくなると、行政の委託事業が受けられるので、少し安定しますが、運営方法について制約が出てきます。

2:運営内容
 ここで大きな問題点は、どうやって相応の問題を抱えた生徒に行き着くかです。
 直接、学校に相談に行っても、ほとんどの場合「個人情報」という壁に遮られ、生徒情報は得られません。
 ところが学校内では、学習についてこられない生徒への対応が、既定の授業時間内では対処できないし、勤務規定に縛られた状況ではいかんともしがたい状況が発生しています。

 生徒自らが学習支援会に、応募してくれる場合は多くはありません。というのは、学習支援についての情報そのものが、当事者に行き着く機会が少ないためです。

 教育行政は、先に書いた理由で、校外の情報を生徒に直接届ける事を嫌がります。

 福祉面からみると、地域に一番密着している社会福祉協議会が頼りになりますが、ここでは、学業のデータはないので、当事者に該当するかの判断は微妙です。

 行政と委託契約が成立していると、行政側から選択した生徒一覧が配布されますが、これが問題をはらんでいます。というのは、大半の行政組織では、学校側からの学業の進捗に問題を持っている生徒情報に、地域行政情報として入手できる住民税の課税状況を重ねて抽出しているようですが、ご存じの通り、個人経営者は課税回避手段をとっている場合が多いため、真実の経済的困窮家庭が隠れてしまいます。

 どうやって、当事者に行き着くのか、ほとんどの学習支援会では、そのために事前面接を行っているようですが、それでもなお当事者に行き着く困難さを抱えています。

 現に、学習支援をしていると「夏休みはハワイに行く!」なんて言ったり、「塾に行ってるので忙しい!」とかいう生徒が多発します。

 もちろん、支援現場では、どんな生徒でも一応に「学習習得に困難を抱えている」として対応していますが、それはそれで、生徒間の「学習の習得への困難」度がいろいろです。
 送り込まれてくる生徒には、介護が必要な場合や、いわゆるグレーゾーンの生徒がいますし、何らかの問題を抱えていたり、不登校だったりという生徒がいます。また、中には成績優秀だけど経済的理由で学習支援に来ている生徒もおり、学習支援者側の対応には、かなり問題を抱えてしまいます。

3:支援者
 多くの場合、学習支援者は、過去に家庭教師をしていたり、塾教師・リタイアした学校教師が含まれます。
 そうした方々は、ともかく「勉強」を進めようとしますが、生徒側は「勉強なんて大嫌い!」です。
 そのため、支援者に求められるのは、「なぜ学習をしなければいけないのか」の明快な理由付けを生徒に解説できることがあります。
 その先で、生徒との信頼関係を作れるかが大切になってきます。
 「あ”っ!この人なら、今まで解らなかったことを、一緒に考えてくれる!」と思ってもらえないと、心を開いてくれません。

 ここで困るのは「私は、相応の知識と経歴があるので、生徒なんて楽に手なずけられる」と思っているような、いわゆる「意識高い系」の方々です。現実の生徒は、生き物で毎回変化してゆきます。ところがこうした方々は、自分の物差しでしか判断しないので、いずれ破綻してしまいます。

 今回は、思いつく範囲でザクっとした学習支援の抱える問題点を紹介しましたが、そもそも学習支援という活動が成熟していないため、まだまだ波乱を抱えています。

 その中で、現場の支援者は、毎回悩み逡巡しながら、生徒に対応しています。

保護者の皆さんや 子どもたちの学習に関与している方々へ 


 一番生徒に近い存在で、関係性が成立しているはずの皆さんは、
生徒の嗜好や、どんなことに興味を持ちやすいかとか、
具体的な手段を見つけやすい立場にいます。

また、学校教科学力以外の学力を発見できる立場にもあります。

 良い相談相手として、また善き話し相手として
身近にいてくださることを願っております。


11.OCT.2023.ARAI