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私、ちゃんと生きてるって思った話

今日の朝は7時に目を覚ました。
こんな時間に起きたのは久しぶりかも。
顔を洗って歯を磨き、すぐにメイクに取り掛かる。
眉はキリッと引いて、アイシャドウは軽めに
どうせマスクで隠れるけれど
コーラルピンクのリップも念入りに塗った。

乗り換えアプリで到着時刻を確認。
スーツを着てハイヒールを履いて玄関を出ると
夏のにおいのする風がジャケットの裾を揺らした。


今日は久しぶりのお客さんとのアポイント。
普段はWebや電話で済ませがちな商談だが
今回はお客さんから来て欲しいと依頼をくれた。

担当してから1年半になるこのお客さんは
なかなかアポイントをもらえていなくて
電話やメールだけでのやりとりが続いていた。
電話口では少しぶっきらぼうな
50歳くらいの男性人事部長さん。

「採用の相談したいから、
ちょっと遠いけど来週会社まで来てくれへん?
観てほしいものもあるねん」

もちろんです!ぜひお伺いさせて下さい!
私は二つ返事で答え、
張り切って商談資料の準備をした。
お客さんに会えること、
外に出掛ける理由ができたこと、
以前までの当たり前の日常が
こんなにも嬉しい私になっていたことに気付く。


かれこれもう1年以上も
時差出勤や在宅勤務をしていたので
通勤ラッシュの電車に乗るのは久しぶり。
結構みんな普通に通勤通学してるんだなと、
世の中の当たり前と私の当たり前に
小さなギャップを感じながら電車に揺られていた。


すると、こんな日に限って電車は遅延。
人身事故の影響で、運転が一時見合わせに。
慌ててお客さんに電話をすると
「仕方ないし気を付けてゆっくりおいで」
そう声をかけてくれた。

駅構内で足止めを食らう
スーツ姿のビジネスマンたち。
私と同じように、それぞれが口々に
上司やお客さんに列車遅延連絡の電話をしている。
そんな光景を見てふと、

あ、私も世の中の人達と同じ時間で生きてるんだ。

そう思って、不謹慎ながら何故か
ホッとした気持ちになっていた。


しばらくすると電車も動き出し、
結局約束の20分遅れてお客さんの会社に着いた。

初めて会った人事部長さんは
思ったよりも白髪で背は低め、
優しい顔をしたおじさんだった。

おそらく電話が苦手な人だったんだろう。
私がこれまで想像していた以上に
気さくに色んな話をしてくれて、
社員想いのすごくあったかい部長さんだった。

最近作った会社紹介の動画を流しながら
「こういうのって採用に使えるかな?」と
熱心に相談をしてくれた。


私の仕事相手はパソコンの画面じゃない。
こんな想いや表情を持った
"人"と毎日仕事をしているんだ。

営業マンとして忘れてはいけない大事なことを
今日の商談で改めて思い出した。


毎朝だらだらと寝て起きて
メイクもせずに机に着いて仕事をする。
こんな日々の中では
自分が社会の中で人と生きていることを
忘れそうになってしまう。

今日はちゃんと、生きてる気がした。
すごくいい日だった。

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