小雨

島根在住/地域・教育魅力化プラットフォーム/地域みらい留学/フリーでもエッセイ・小説・…

小雨

島根在住/地域・教育魅力化プラットフォーム/地域みらい留学/フリーでもエッセイ・小説・インタビュー記事書いてます🖋️

マガジン

  • 【インタビュー】

    20代、等身大で頑張る人たちを取材しています。

  • 【オススメ】

    50スキ以上頂けたオススメの作品たちです。

  • 【短編小説】

    ホッと一息つく3分〜5分で読める短編小説です。

  • 【ショートショート】

    隙間時間の30秒で読める超短編小説です。

最近の記事

  • 固定された記事

私は、自己承認欲求の塊なので。

892人。これは、私のSNSの総フォロワー数。 Instagram、Twitter、Filmarks、note等 あらゆるSNSに私のフォロワーがいる。 私は有名人でもなんでもなくて、 ただの大阪在住のOL。 そんなただの一個人の私の自己表現は、 892人の人たちに届く。 892人の人たちに晒される。 SNS上に個人がアカウントを持ち、 写真や絵や映像、言葉など様々な表現を 世の中に対して自由に放てる時代。 あくまで一自己表現の場であったはずのSNSも 「いいねボタン」の存

    • ぼくを照らした宇宙のはなし

      ぼくは宇宙を背負って生きている。 1000兆個の星が瞬くあの宇宙を、だ。 別に誰に頼まれたわけでもない。 それでも、 あのプロジェクトの成功も あの子の涙を拭う役割も あの人の毎日の食卓も この世界を照らしうる 星の瞬きならばもれなく ぼくが背負おうと思って生きている。 そんなぼくを見て周りは言う。 「しっかり者なんだね」 「優しさに溢れた人なんだね」 「責任感が強いんだね」 だけどぼくという人間は そんな褒められたものじゃない。 ビッグバンにより膨張を続ける 無限

      • 【エッセイ】永遠は、いくつもの今でできている。

        君と出会う少し前、 私は人生の底を見た気がした。 もうあれ以上傷付かないよう 失って惜しいものなど持たぬよう これから先の人生は 一人静かに慎重に生きていくつもりだった。 だけど、 君に出会ってから私の人生は 君の手によりみるみる変えられていった。 直観的で突発的で、 毎分毎秒の“今”を生きる君は それまで固く握りしめていた 私の拳をいとも簡単に解いてみせると その手をぎゅっと握り 少し強引に連れ出してくれた。 不思議なほどに温かい君の左手は 冷え切った私の右手へ ひ

        • 『伝統の継承〜若宮神社例大祭2023〜』

          2023年10月22日 秋晴れに恵まれたこの日、 島根県出雲市の沿岸部に位置する十六島町で 若宮神社例大祭が執り行われた。 4年ぶりの開催となった今年、 相変わらずの野太く力強い太鼓の音と 鋭く繊細な笛の音の祭囃子に合わせ、 初々しくも逞しい獅子舞踊りが奉納された。 多井区に古くから伝わるこの伝統芸能を 代々継承してきた「多井獅子舞保存会」は 今年新たに8名の若手会員を迎え、 次世代への伝統継承の新たなスタートを切った。 今回、自身も十六島の町で育ち 若宮神社のお祭りに

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        私は、自己承認欲求の塊なので。

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        記事

          【エッセイ】夕凪の心残り

          夕日が西に傾く頃 波風がぴたりと止むのが分かった。 僕は歩みをふと止めて 振り返ってシャッターを押した。 20代の折り返し地点に立ったとき それまで自分に 惜しみなく吹き込んでいた 夢や希望の類のものが ぴたりと止んだのが分かった。 会社員は思ったより偉くないし、 貯金残高は思いのほか増えない。 朝までカラオケで歌い飲み明かすくらいなら 自分のベッドで眠りたいし、 一度温泉に浸かったくらいじゃ肩こりは治らない。 甘いケーキも燃え上がるような恋も 胸焼けして毎日は食べられな

          【エッセイ】夕凪の心残り

          【20字小説】52度目の春

          君への触れ方 僕はすっかり 忘れちゃったよ。

          【20字小説】52度目の春

          【エッセイ】拝啓 元恋人へ

          拝啓 元恋人へ お元気にしていますか? 今は誰か別の人の隣で 幸せに過ごしていますか? おかげさまで私の方は 別にあなたが隣に居なくても 充分に幸せに過ごしています。 安心してください。 あなたへの未練なんてものは 微塵もありませんよ。 ただ、本当にたまに、 今の私の「当たり前」は そういえばあなたがつくったものだと ふと気が付かされることがあるくらいです。 シャンプーは未だに 黄色のHIMAWARIを使っています。 お風呂上がりの私を抱き寄せ ロングの髪に鼻を擦り

          【エッセイ】拝啓 元恋人へ

          【短編小説】ヘビースモーク

          日曜日の午後1時、 ベッドに寝転び手持ち無沙汰な私は 弓を引いては射るかのごとく タイムラインの更新を繰り返していた。 0コンマ3秒のあいだ グレーのビジーカーソルを眺めて待っていると 一枚のウエディングフォトが映し出された。 海辺の夕陽に照らされて 花嫁とまっすぐに見つめ合うその横顔は あの頃私が、どうしようもなく好きだった 儚くて遠いあの横顔だった ──────── 「よっミカ、ひさびさ! 悪いんだけどさ、1本もらってい?」 声のする方を振り向くと、 指を軽く二本立

          【短編小説】ヘビースモーク

          ありがちで退屈な『14歳の栞』

          果てしない無敵感と底なしの無力感を 両腕に抱えた14歳の私は、 校庭に敷かれたトラックを見下ろしながら そのけだるい身体を教室の壁に預けてみた。 モルタルの壁に触れた制服の肩元は 黒板のチョークが擦れたみたいに 粉っぽく、粗い白色に染まった。 その白を見つめため息を吐く私は 早く、こんな服を脱ぎ捨てて この小さな箱から抜け出したいと思っていた。 港町の小さな中学には 同級生が19人しかいなかった。 大規模校に特有の 個性という名の小さなトゲを 規定という名のヤスリで削

          ありがちで退屈な『14歳の栞』

          【エッセイ】春の訪れ、事件の香り

          春の訪れを感じる瞬間ってのがある。 花粉が鼻腔をくすぐるからじゃない。 桜が青空をピンクに染めるからじゃない。 昼間パーカーの袖元が少し汗ばむからじゃない。 コナンの映画が公開されるから。 なんとまぁ商業的で風情のないこと。 それでもこれが、来る年も来る年も 私に渦巻く"春"の想いを 性懲りも無く揺さぶってみせるのだ。 シリーズ第1作目は1997年公開の 『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』 私の誕生と共にスタートした 劇場版名探偵コナンシリーズは、 子供の頃から全作

          【エッセイ】春の訪れ、事件の香り

          【短編小説】1LDK叙事詩

          「じゃあ、そろそろ行くね」 そう言って洗面所から出てきた彼女の唇には 薄いピンクのリップが塗り直されていた。 「おう」 案外あっさりと訪れた別れの瞬間に 拍子抜けした僕は 思わずそっけない返事をした。 「荷物、これだけ?」 彼女の足元にまとめられている 2.5周分の四季の洋服が詰め込まれた 大きめのキャリーケース1つと よく分からないタイトルの本が びっちり詰まった2つの大きな紙袋は 28歳女性の2年半に渡る暮らしの痕跡にしては あまりに質素に感じられた。 「うーん、そうだ

          【短編小説】1LDK叙事詩

          【エッセイ】アルコホリックの果てに

          生意気にも今日は少し、 昔話なんかをしてみたくなった。 まあ、大して昔の話でもなくて せいぜい2.3年前のことなんだけど。 私にとっては今でも眩しい 一生に一度しか訪れない 青春みたいな日々だったから ふいに今、言葉で残しておきたくなった。 大阪に住んでいた頃、 「緊急事態宣言」やら「まん防」やらに 私たちの青春は踊らされていた。 会社の同期や先輩たちとの 飲み会専用グループLINEがふいに動く。 『緊急事態明けたら飲み行こ!』 先輩からのその号令が 窮屈で単調なリモ

          【エッセイ】アルコホリックの果てに

          【短編小説】蒼の踊り子〈前編〉

          浅草ロック座、雨の夜。 静かであまり人が居ないなら、 アンナはトップレスになって踊った。 舞台の真ん中、背後から 大きなミラーボールに照らされた 彼女の裸体の曲線はまるで 雨粒を乗せた紫陽花の葉脈が 今にも弾け落ちそうなその重みに 静かな力を指先に込めながら なんとか堪えているかのような しなやかで危うい線だった。 客が多く集まる舞台になれば 彼女はさっと蒼のショールを身に纏い バストを隠し妖艶に踊った。 そうすれば男たちはみんな、 蒼の向こうを覗きたくて堪らないという

          【短編小説】蒼の踊り子〈前編〉

          【エッセイ】用法容量をきちんと守って

          「はぁ…はぁ…はぁ… 先生、また最近苦しいんです」 「最近はどんな症状が気になる?」 「不安なんです。とにかく。 涙が出るしイライラもするし。 なんだか息もしにくい気がする。 いつまでこれが続くんですかね? はやくこの苦しさから逃れたいんです… だからほら、またあの薬か欲しいんです」 社会人になった頃からだろうか、 その病はいつも突然に私に襲い掛かった。 ただ幸いなことに、 この手の症状を緩和させる特効薬を 私は既に持っている。 有り余るほど処方してもらっているから安心

          【エッセイ】用法容量をきちんと守って

          【エッセイ】しがない新年の憂鬱

          新年明けましたね。 おめでたいことなのでしょう、きっと。 こんなおめでたい日なのですが あえて白状したいことがあるのです。 私、この艶やかな赤と白に 神々しい金色のあしらわれた 年末年始の華やかな数日間が どうにも少し、苦手なのです。 ええ、ええ、分かっております。 なんと寂しい心の人なのだろう、 素直に楽しめばいいのに。 そんなだと、神様にそっぽ向かれて 罰当たりな年になっちゃうわよ、 だとかなんとか言いたいのでしょう。 だけどやっぱり私にとって、 この日々は憂鬱なん

          【エッセイ】しがない新年の憂鬱

          【エッセイ】なんかビビッときたもんで。

          たいていの人は、 自分が本当はなにが欲しいのか 心の中でわかっている。 私もあなたも、例外なく。 本当に手にしたいものが 目の前を通り過ぎようとしたとき 人はとっさに手を伸ばそうとする。 それが彼方100キロメートル先の 夜空を駆け抜けようと、 わずか20センチ先の お寿司のレーンを駆け抜けようと。 いわゆるそれが「直観」であり、 その手を止めるのが「論理」である。 『あれが欲しい』 と直観がつぶやけば 『だけど私には到底届かない』 と論理が言い放つ。 そうして伸ば

          【エッセイ】なんかビビッときたもんで。