演劇公演、問合せ先を明示しない団体が存外多いという話。解決のヒントもちょっとだけ。
どのくらいの割合という具体的な数字は言えないのですが、演劇公演のチラシや特設ページ・ポータルサイト、そういった公演案内のコンテンツに問合せ先を記載しない団体が存外多いことが気になります。
電話番号やメールアドレスなどが掲載されていないの。TwitterやFacebookのアカウントを記載して問合せ先の代用としている場合もある。いやそれ、代用になどなるはずもないよ、用途が違う。興行を企画・運営する者としてそれはあまりにも無責任だと思うよ。
作り手の姿勢が丸わかり
舞台公演であるのに問合せ先を明示しないということは「この公演は対外的な責任は持ちません」「お客様が困ってもほったらかします」「都合が悪くなったら逃げます」という意思表示と受け取られたって仕方がない。
何かトラブルが発生したとき、お客様が困ったとき、連絡する先が明示されていないというのは興行として絶対におかしい。
こういうのが蔓延し、作り手の間で疑問も持たれず、「今回はそういう形で行きましょう」という判断が下されてしまう、演劇業界の悪いところ。仕事をする者としての責任感の無さ。公演や運営の規模がどうであれ内容がどうであれ、公演を打つ以上は「窓口となる電話を持つお金が無い」とか「対応する人手が足りない」とか、そんなことは理由にならない。
情報発信・拡散をためらう
私はデザイン・販促ツールを制作する仕事に就いていることもあり、演劇公演の情報を発信するに際しても「内容の不備・不足はないか」「お客様への案内として適切な情報か」ということを大切にしていて。だから問合せ先を明示しない案件は拡散したくないと思っている。
ところが。
その信念に従っていると、発信・拡散したい情報もその一点がネックになって発信できないという事態が起こる。しかも頻繁に。
とはいえ、お客様に「情報を発信することが最優先」となれば公開せざるを得ず、関係者に前述の事項を指摘・説明した上で情報を取りまとめて公開するというケースが多くあり……。個人的にこれは毎度すごい葛藤、しかも真っ当に仕事をしていれば本来は葛藤する必要もないような場所でつまづくという。
TwitterやFacebookなどSNSへの誘導という形でも許容するしかない。それすらもないところはアウト。このあたりの線引きは非常にあいまいだし、そもそもは登録していなければリアクションできないような手段は駄目だと思っているけれど……。
「お金が無いから出来ない」と言う前に。
演劇関係の改善とか提案の際によく聞く、「お金が無い」「予算が無い」「時間が無い」「人手が足りない」というワード。
だからどうした?策は練った?代案を探った?その上で言っている?
と、常々思う。これまで、何か提案しても大体そういう言い訳のもとになあなあになることが多かったのだよね。公演を打つ、その最低限の責任も持てないなら公演なんかやらなきゃいいんじゃない?って。作ることに重きを置いて、お客様や社会的な責任をないがしろにするなんておかしいでしょう。自分が気持ち良くなるために打つ公演ならせめて入場無料・入退出自由でやって欲しい。お客様のフォローをしないのに自分が気持ちよくなりたいなんて勝手すぎる。
電話を複数台維持するだけのお金が無い場合
継続して端末を維持する費用は捻出できない、でも個人携帯の番号をさらすのはNGならIP電話を設定するとかね。※個人的にはプライバシー・安全面の問題があるので役者であろうがスタッフであろうが個人の番号はなるべくさらすべきではないと考えています。
もちろんこの場合も追加の電話番号は個人のスマホに割り振らねばならぬので、一時的とはいえ端末を受付周りなどに出さねばならぬという問題はあるし、どの端末に割り当てるかだとか、セキュリティ面をケアする必要はあるけれど。あと「10:00-20:00」など、時間の設定をして周知するとかね。
ちょっと余裕があるのなら、短期のレンタルサービスを利用するのも一つだと思う。もちろんこれも対外的に時間や期間の周知は必要だけれど。
電話が準備できないのならせめてメールアドレスを
様々な理由で電話が準備しにくい、それはわかる。だったらせめてもメールアドレスを記載して欲しい。もちろん、レスポンスは可能な限りはやくすることを心掛けつつ。そして企画・運営元となる以上、メールアドレスはフリーメールではなく、独自ドメインなどの信頼できるアドレスを使うこと。Yahoo!メールやGmailなどが使いやすいと言う人も多いだろうけれど、やはり興行に対する姿勢として見た時に「軽んじている」という印象は免れないので。
雑感
こういう話題の時にいつも気になるのは。作り手が作ることばかりに夢中になって「サービスを提供する」という要素を軽んじてしまった場合に、お金・時間・人手が足りないという現実を「だからしかたがない」と正当化してしまうということのマズさ。顧客志向というものを無視した作り手が多いということ。
演劇業界の現状。作り手と受け手が対等であることはなく、どうしても作り手側がお客様を選んでいるような部分が大きいと思う。それだって悪いことではないのだけれど、より多くの方に演劇に触れてもらいたいと願うのであれば、もっともっとお客様の目線に立たないとダメ。作り手と受け手のパワーバランスの悪さが演劇の普及の足を引っ張っていると思う部分も多いのですよね。
どんなにいい作品を作っていようとも、広がらなければ意味がないし、拡げるためには顧客志向が必要。まずは「顧客志向って何?」と、ググるところからはじめてみませんか。