Book Review:『ぼっちのままで居場所を見つける ―孤独許容社会へ』
1. 本の紹介
書名: ぼっちのままで居場所を見つける ―孤独許容社会へ
著者: 河野 真太郎
出版社: 筑摩書房(ちくまプリマー新書 470)
発売日: 2024年10月10日
ジャンル: カルチャー批評/社会学
2. 目次
第一章: ロンリネスとソリチュード ―または、エルサの孤独
第二章: 孤独はいつから避けるべきものになったのか ―ひとりぼっちのロビンソン
第三章: 「ソウルメイト」の発見 ―依存と孤独とジェイン・エア
補論: 「友達100人」は孤独を癒やしてくれるのか?
第四章: 死別と孤独 ―ヴィクトリア女王から『葬送のフリーレン』へ
第五章: 田舎のソリチュードから都会のロンリネスへ ―森の生活と、ある探偵の孤独
第六章: 自分ひとりの部屋と向かいのおばあさんの部屋 ―ヴァージニア・ウルフの場合
第七章: 誰でも孤独でいられる社会へ ―排除型社会と孤独
3. 本書の重要なキーワード
ロンリネスとソリチュード: 孤立的な孤独と豊かな孤独の違い
排除型社会: 孤独を生む社会構造
社会を想像する力: 孤独許容社会を実現する想像力
4. 本書の注目すべきポイント
1. エルサの孤独の再考
映画『アナと雪の女王』のエルサの「孤独」は、悲しみでも解放でもない。
社会が認めない「幸せな孤独」の象徴として、現代社会の価値観を問い直す。
2. 文学やカルチャーを通じた孤独の考察
ロビンソン・クルーソーやジェイン・エア、シャーロック・ホームズといったキャラクターを題材に、人類が孤独をどう捉え、時代によって変化してきたかを分析。
3. 「排除型社会」としての現代
孤立を個人の問題とせず、社会構造に内在する孤独の要因を指摘。勝ち組男性の孤独感や女性のソリチュードの特権性に注目し、多様な視点から孤独の構造を解明。
4. 「良い孤独」を肯定する提案
孤独を否定すべきものとする価値観に対抗し、孤独を受け入れる社会の可能性を示す。個々人が孤独を恐れるのではなく、それを居場所として肯定する未来を想像する。
5. 本書を薦めたい読者層
孤独をネガティブに感じる現代人
社会学やカルチャー批評に関心がある人
SNSや過剰なつながりの中で「一人の時間」を求める人
映画や文学を通じて社会の課題を考えたい人
総評
河野真太郎氏の『ぼっちのままで居場所を見つける』は、孤独を「問題」ではなく「現象」として捉え、豊かな視点を提供する一冊です。
多様な事例を通して「孤独許容社会」の可能性を示し、孤独を恐れるのではなく、価値として見直す機会を与えてくれます。
現代人の生き方に深く響く、思索の旅に出ることができる本書は、多くの人にとって新たな洞察をもたらすでしょう。