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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た

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書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親) 新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ね…
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#子育て

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #はじめに

書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親) 新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。  「子育てはどうしてこんなにつらいんだろうーー」 そう思ったことはありますか。私はあります。  ライター/編集者として、「仕事と子育てを両立すること」に疲労困憊している親(特に母親)の姿をたくさん見てきました。ちゃんと育てなきゃという内側からの使命感や、ときにはプレッシャー

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #26

親子の対話はなぜ続かないのか 「もったいないイベント」対話ドキュメンテーション①  親と子の対話はとても大切ーー分かっていても、実際にはなかなか難しいものです。先日開催したイベント「【それって「もったいない子育て」!? イベント~対話めいたもの~】でもそんな声が出ました(ご参加くださった皆様ありがとうございました!)  「書く→対話する→書く→……」という新しいサイクル(#20参照)としてイベントを振り返ります。ちなみに今後、この試みを「対話ドキュメンテーション」と命名し

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #24 

親子の間にある「対話めいたもの」③ 思春期になってからでは遅い?    さて、親子の間で「対話する」とどんな「いいこと」があるのでしょうか? たくさんあると思いますが、一つは思春期の親子関係に関してです。  「難しい思春期になってからも、親子で話すことができるかどうか。それは小さいころからの対話の積み重ねに影響されると私は思います。必要に迫られてから急に対話しようと思ってもなかなか難しいもの。子どもが小さいころから対話しておいたほうがよかったなあ、と思春期を迎えてから後悔

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #21

大先輩のアドバイスも もったいないイベント(習い事)後編  【それって「もったいない子育て」!? イベント 習い事】の振り返り(前編#20)の続きです。   参加者の多くがびっくりしたエピソードもありました。1歳半ごろから10個ぐらい習い事をしている子がいた、と。そもそもその年齢でそれほど選択肢があること自体に驚きの声があがりました。さらに「その子はだんだんあまり笑わなくなっていった」という追加情報もあり、考えさせられる一場面も。  また、参加くださった助産師の吉田敦子

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #17

習い事選びのもったいない③ (17) 観察は難しいけれども意味がある  前回、親の観察を妨げる「邪魔者」について考えました。 しかし、たとえ「邪魔者」の存在を認識していても、「ただ観察する」ことは簡単ではないです。  例えば、うちの子は絵をよく描いている、よく踊っていると感じても、「でも、子どもはみんな絵を描くのが好きでしょう?」「子どもは誰でも踊るのが好きでしょう?」と思ってしまうかもしれません。  井上さんはこう言います。「例えば、『絵を描くのが好き』と一言で言っ

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #16

習い事選びのもったいない② (16) 観察におけるいくつかの「邪魔者」  前回(#15)に続いて、「習い事選びのもったいない」について、です。  親の観察を邪魔するのはどんなものでしょうか? 例えば、「小さいころに絶対〇〇を習うべき」「私がやってよかったので(よくなかったので)〇〇を習うべき(習うべきでない)」といった親の思い込み。  「自分が〇〇をやっていて体幹が鍛えられたので子どもには絶対〇〇をやらせたい」といった考えも思い込みに入るかもしれません。ほかの習い事でも

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #18

習い事選びのもったいない④ (18) 「嫌い」にならなければまた出合えるかも  習い事の「あるある悩み」といえば、子どもが「やめたい」と言い出したときにどうするか、でしょう。  ここまで費やした時間や金額が親の頭をよぎり、「せっかくやったのに」という言葉が浮かびます。上達ぶりが目に見えていればなおさら、残念な気がしてしまうでしょう。また、自分で「やる」と決めたものを「やめるのはよくない」という考え方もあるかもしれません。  でも、子どもが「やめたい」と心の底から言ってい

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #14

「自分の親の子育て」を冷静に客観的に振り返る (14) 正解は子ども中にある   井上さんは自分の子どもが生まれたときに、自分の子育ての軸とする2本柱の方針を決めたそうです。そのタイミングで方針を決めるのは、なかなか難しいことだと思いますが、そこに至った背景には、井上さん自身が、自分の育てられ方について、深く考え続けてきた長い経緯があります。  井上さんは、とても恵まれた子ども時代を送ったはずなのに、心のどこかにわだかまりがあったと振り返ります。家業を継ぐことが決められて

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #13 

 子育ての目的はシンプルだけど…… (13) 方位磁石のような大きな方向性  「子どもが生まれたとき、子育ての『方針』を決めましたか?」と井上さんは問いかけます。「子育ての方針」と聞くと、みなさんはどんなものをイメージしますか。  自分自身の子育て(初期)を振り返ってみると、赤ちゃん時代は「お世話」に追われて、極論すれば子どもを「生き続けさせる」ことに毎日必死でした。そして、少しずつ赤子から子どもらしくなるにつれて、新たな悩みに日々直面しながら、自分はどんな子育てをしたい

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#10 

 社会的な評価に縛られることのもったいなさ (10) ひとり一人の子育てがもたらす尊い力  前回(#9)、自分が思い込みに囚われて不安になっていたことに気づいた、という話をしました。突き詰めれば学校や学年も、もともとは人間が便宜的に作り出した手段だったはずです。でも、いつの間にか自分の中で目的のようになってしまっていました。そして、それに縛られて焦っていました。  親は、しばしばそんな状況に陥りがちです。例えば、テストの点数や偏差値、「〇〇大学合格」といった指標も、親の心を

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #12 

子育てには「トラップ」になり得るものがある (12) 方針がないと「選択肢ありき」で振り回される 子育てには「トラップ」になり得るものがたくさんあります。  「みんなが行っているから」という理由だけで習い事を決めてしまったり、なんとなく受験塾の説明会を聞きに行ったら、流されて受験をすることになってしまったり(もちろん、本当に必要としている人にとっては「トラップ」ではありません)。  自分の中に、軸となる子育て方針がなければ、そうした外部の選択肢に触れるたびに、右往左往さ

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#11 

仮説を立てないことのもったいなさ (11) ポジティブでクリエイティブな「もったいない」  タイトルをはじめ、この連載では「もったいない」というキーワードを多用しています。「もったいない」という言葉は、ときと場合によってネガティブに響くこともあるかもしれません。  例えば、時間がなくて焦っているときに、リサイクルすべきものをつい廃棄してしまい、その瞬間を見た家族の誰かから「あ~、もったいない!」と厳しい口調で言われたとします。そんな「もったいない!」は批判の言葉に聞こえる

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#9 

既成のものさしを手放せないもったいなさ (9) 不安になる理由は自分の中にあった  親になると、教育というテーマが突然「自分事」になります。「どういう子育てや教育がいいのか」を知りたくて、本や講演などで学んだことのある人は多いのではないかと思います。  自分自身も子育て中の親なので、仕事としてだけでなく、自分事として子育てや教育、学びなどについて探究してきました。  本を読んだり、講演を聞いたりしても、なかなか不安が解消しない、という人は少なくないと思います。それは内容

井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#8

#8 アメリカで見た、親の「応援表現力」 (8) 謙遜の文化と「私なんて……」のつながり  前回(#7 多くの親が陥りやすい「ちいさな病」) の続きです。親の「ちいさな病」がある上に、日本には謙遜の文化があります。  自分の子どものよいところを誰かにほめられたら、「いえいえ、うちの子なんて……」と謙遜してしまうことはありませんか。でも、それこそ「もったいない」と思います。  せっかく気づいてくれたのだから、素直に感謝して、そのよいポイントを伸ばす機会にしたいものです。反