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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #14

「自分の親の子育て」を冷静に客観的に振り返る
(14) 正解は子ども中にある

  井上さんは自分の子どもが生まれたときに、自分の子育ての軸とする2本柱の方針を決めたそうです。そのタイミングで方針を決めるのは、なかなか難しいことだと思いますが、そこに至った背景には、井上さん自身が、自分の育てられ方について、深く考え続けてきた長い経緯があります。

 井上さんは、とても恵まれた子ども時代を送ったはずなのに、心のどこかにわだかまりがあったと振り返ります。家業を継ぐことが決められており、自己選択ができなかったのがその原因だと思い至りました。

 自己選択が許されない苦しさと向き合い続けてきた井上さんは、子育て方針の一つを「本人の自己選択を尊重する」としました。

 さらに井上さんは考え続けました。たとえ周囲から将来の進路を押しつけられたとしても、跳ね返す力が自分の中にあれば、それほど長く悩むこともなかったのではないか、何か変化を起こせたのではないか、と。つまり、外側の責任を追及するだけでなく、「自分自身にも足りない点があったのではないか」と冷静に客観的に振り返りました。そして、自己選択して進んでいけるようになるための土台になる子どもの「内側の力」を育むことを2つ目の方針にしました(詳細は後の回で述べます)。

 「自分の親の子育て」について考えることは、自分の子育てについて考えるきっかけになります。ただ、「つらかった」などの負の感情が大きすぎると、思考停止に陥ってしまうこともあるでしょう。例えば「自分の親が厳し過ぎてつらかった」から「子どもはすべて放任で育てる」といった単なる反動では困った結果になってしまう可能性もあります。負の感情がスタートだったとしても、冷静に客観的に考え続ける必要があります。それには自分自身に向き合う勇気や努力も必要でしょう。さらに今は時代背景も異なります。

 「『何を達成してほしいか』ではなく『どんな人に育ってほしいか』を考え続けることが大事だと思います」と井上さんは提案します。

 子育ての手法に正解はありません。裏を返せば、正解は子どもの中にあると言えます。
 
 目の前の子どもを観察する。
 目先の達成ではなく、長い目で見る。
 部分だけではなく全体を見る。

 まずはそれらを心に留めて、自分の子育ての軸を考え続けること(できるだけ肩の力を抜いて楽しみながら!)。外の情報に振り回され過ぎないこと。それが大事なのだと自戒を込めて思います。

(#15に続く)



書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)

新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。



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