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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #17
習い事選びのもったいない③
(17) 観察は難しいけれども意味がある
前回、親の観察を妨げる「邪魔者」について考えました。
しかし、たとえ「邪魔者」の存在を認識していても、「ただ観察する」ことは簡単ではないです。
例えば、うちの子は絵をよく描いている、よく踊っていると感じても、「でも、子どもはみんな絵を描くのが好きでしょう?」「子どもは誰でも踊るのが好きでしょう?」と思ってしまうかもしれません。
井上さんはこう言います。「例えば、『絵を描くのが好き』と一言で言っても、細部を描きこむのが好き、色を使うのが好き、立体を描くのが好きなど、細かく見ると異なります。踊りでも、音に合わせるのが好きなのか、自分を表現することが好きなのか、など違います。親がここまで細かく見る必要はないと思いますが、丁寧に見ようとする姿勢を親が持つことで、親の思いでずらすのではなくて、子どもの持って生まれたものを大切にしようと考えやすくなるのではないでしょうか。子どもの習い事は、子ども自身が生きる喜びを得られるものをすればいいと思います」
親が、「大人のものさし」に囚われていることも観察を難しくしている一因かもしれません。「大人の思考は、『何ができるか』『何を好きか』、など『何』に囚われがちです。また、社会から見た『力』をつけさせたいと思ってしまうから、習い事も『何を身に着けさせるか』という視点で考えがちなのかもしれません。それがゴールになると、最短距離を選んでしまいがち。親が猛烈に引っ張ることで子どもの持って生まれたものをつぶしてしまう例はたくさんあると思います」
また、せっかく観察しても、それを生かせない人もいる、とも。「観察した結果を、無理にずらしてコントロールしてしまう人も中にはいます。子どもが持って生まれたものへの信頼感が薄く、大人の社会がよしとしたものへの信頼感のほうが強いのかもしれません」
「何ができる」ではなく、子どもの状態の些細な変化こそ注目したい点だと井上さんは提案します。「ずっとそこにおいてあったけれども、これまでは開いたことのなかった図鑑を持ってきて開いたらそれも立派な『変化』。子どもの『状態の変化』を観察し、些細なことの素晴らしさを軽視しないように心がける。あせらず、子どもが生まれ持ったものを信じてほしいです」
(#18に続く)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。