【人事のみなさまに読んでほしい】子育て世帯が働きやすい会社にするために転勤で社員に起きることを考える手がかり
みなさん、こんにちは!コドモン広報グループです。本日は企業のみなさんと一緒に、子育て世帯が働きやすい会社にするためのこれからの企業のあり方について考えていきたく、noteを執筆しています。
共働き世帯が7割を超えたいま、多くの企業で子育てをしながら活躍するメンバーがいると思います。コドモンでも6割のメンバーが子育て中で、子どもがいるいないに関わらず働きやすい環境を整えることを大切にしています。
今回、子育てをしている誰にでも起こりえる「転勤や引越しに伴う保活」に関して企業のみなさんと一緒に考えていきたく、独自の調査・経験者インタビューを実施しました。組織において多様な人材が働きやすい環境を整えることが重視されるなかで、転勤によりメンバーの生活にどういった影響があるのか、今まで以上に企業は考える必要があると感じています。私たちは「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」のミッションのもと、みなさんとこれからの企業のあり方を子どもの未来のために考えていきたいと考えています。
企業として知っておきたい、転勤や引越しに伴う保活の負担
保育園を取り巻く社会課題として「待機児童問題」は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。保育が必要な状態にも関わらず保育園の定員がいっぱいで入園できない子どものことを「待機児童」といいますが、こども家庭庁の最新の調査結果によると令和5年4月における保育園での待機児童は2,680人と5年連続で最少という結果でした(※1)。平成29年は26,081人だった待機児童がここまで減ったというのを数字で見ると、このまま待機児童が減っていけば保育園に入りやすくなりそう、と思う方もいるかもしれません。
ですが、待機児童が解消されれば本当に保活自体の負担も減少したと言っていいのでしょうか。保活を始める子育て世帯は、入所申込が開始する前から自治体とのやり取りや園との調整のために膨大な時間と労力が必要となります。それに加えて、引越しや転勤の必要性があった場合、引越し先での保育園を探すためにイレギュラーな対応が求められます。今回私たちは、この転勤や引越しの際の保活に注目しました。
政府も2026年度から保育所への入所申請をオンライン化するなど手続きの負担軽減を目指しています(※2)。私たち企業も社員が転勤をするとき、保活の負担がどれほどなのかについて考えるべきなのではと思い、このnoteを通して発信することとしました。
※1 こども家庭庁 「令和5年4月の待機児童数調査のポイント」https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f699fe5b-bf3d-46b1-8028-c5f450718d1a/8e86768c/20230901_policies_hoiku_torimatome_r5_01.pdf
※2 2024/2/4 日本経済新聞「保育所の入所申請、スマホで完結 26年度から全国展開」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA23B6K0T20C24A1000000/
発信にいたった経緯
最初のきっかけは、とある記者さんとの会話でした。全国展開するメディアの記者は転勤経験者が多く、その方も転勤をきっかけに保活を3回経験したとのこと。通常の保活の何倍もの負荷がかかっていることを聞いて、衝撃を受けました。さらに、ある社内メンバーも前職で家族の転勤に伴った保活を経験、妊娠中に5回も東京と愛知を往復し、家探しまで、、という壮絶な話を聞いて、根本には構造の問題があり、当事者だけの責任にすべきではないため問題提議の必要があると考えました(経験者のエピソードは後ほどご紹介します)。
ちょうど同じ頃、社内Slackで「引越しと保活」についての話題があがりました。引越し予定の子育て中メンバーが引越しに伴う保活経験者へ話を聞いているのをみて、転勤でなくても引越しによる保活の経験者は結構いそうだということがわかりました。なかには、転園が難しそうという理由で引越しを断念したメンバーも。
このSlackからでも、転居する際の保活は非常に負担であることがうかがえます。そこで私たちは、「転勤や引越しに伴う保活の経験者」がどれほどいるか保護者に調査をすることにしました。
4人に1人が転勤や引越しに伴う保活を経験
8割が「大変だった」と回答、3割は「退職/転職を選択」
2024年2月に実施した保護者175名を対象にしたアンケートでは、25.1%が「引越しや転勤に伴う保活を経験したことがある」と回答。そのうち86.4%は「とても大変だった」もしくは「少し大変だった」と回答しています。
苦労した点としては以下があげられています。
具体的なエピソードも経験者の方からたくさんあがりました。
「兄弟別園となったため、送迎が片道1時間30分かかり大変でした」
「転園できなければ仕事をやめなければならず、情報収集のために引越し先に何度も通った」
「夫の転勤で引越したため私は退職。家探しや転居に伴う手続きの山から私の就活は後回しになり、年中児を幼稚園、未満児を保育園一時預かりにした。職を得て兄弟で通える保育園に転園が決まったが、申込から利用開始まで最短で2か月かかる決まりとのこと。2か月間は職場・幼稚園・保育園を車で送迎してまわる『市内一周』状態で負担だった」
こういった声からも、転勤が決まってからの共働き世帯の保活の負担が非常に大きいことがわかります。また企業によっては辞令を出すタイミングが決められている会社もあります。保活には一次募集と二次募集があり、応募や入園タイミングが限られています。それにあわせて企業も子育て世帯の転勤タイミングや辞令を出すタイミングに柔軟に対応できるようになるとよりよいのではないでしょうか。
さらに転勤という局面においては「男性のキャリアに女性があわせる」といった傾向も見受けられ、「男は仕事・女は家庭」「男性は主要な業務・女性は補助的業務」等のように、男性、女性という性別を理由として役割を分ける性的役割分担が色濃く残っている制度と考えられます(※3)。とはいえ、男性の育休取得率も少しずつ上昇しているなかで、企業の中で子育てによりコミットしている男性がまだまだマイノリティであり、育休を取りづらい状況やお迎えに行きづらいといった現実とも向き合うべきと考えています。
※3 令和5年6月 内閣府男女共同参画局「令和5年版 男女共同参画白書」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf
メディア記者、コドモンメンバーに聞いた 転勤・引越しに伴う保活のリアル
1月下旬には転勤や引越しに伴う保活を経験したメディア記者の方2名と、コドモンメンバー2名による座談会を実施しました。その中でも企業のあり方についてお話しいただいた部分を一部紹介いたします。
●メディア関係者 Aさま
地方勤務と東京への転勤による保活を3回経験
「転勤は女性も男性と同様にキャリアを積んで転勤が生じる可能性があるということを想定した制度になっていないので、道なき道を切り開いていかないと、自分が働く環境も子どもを育てる環境も整えられない社会になってるんだという壁にぶち当たりました。」
「会社が転勤を命じたら実はその相手のパートナーの人生を犠牲にしてたり、もしくはそのパートナーの会社側の福利厚生に実は見えないところでただ乗りしてるといったことをみんなが認識すべきと考えています。」
「でも、今私が勤めている会社はボトムアップですごく変わってきていて、子育てのために転職をしたとか、女性が担うことが多かった家探し・保育園探しを男性の方が主に担当しているとか。下からボトムアップしていく必要があるのかなと思ってます。」
●ハフポスト日本版ニュースエディター 相本 啓太さま
子育てをきっかけに新聞社を退職、パートナーの転勤・転職による保活も2回経験
「前職の新聞社で育休を取ろうとしましたが、当時務めていたリーダー役を途中で放棄することはあり得ないという風潮がありましたし、代わりの記者はおらず仕事が属人化していたので、結果的にパートナーのキャリアを終わらせる一歩寸前までいってしまいました。夫婦で話し合い、子育てはずっと続くという観点と、2人がキャリアも子育ても妥協せずに生活するために、まずは私が思い切って環境を変えようと退職しました。」
「いまは共働きの家庭も増えている中で、家族のあり方が『女性が家庭で男性が外で仕事』という1つの形だけではないというのを、企業も分からないといけないし、 ジェンダーとか多様性とか働き方とか子育てって、全てが全部絡み合ってると思います。」
●コドモン コーポレート統括部 ゼネラルマネージャー 北原 恭子
パートナーの転勤による保活を経験、名古屋と東京を5回往復
「パートナーの会社では共働きの子育て世帯が帯同して転勤するという事例がなかったみたいで制度も特段整っていなかったので、名古屋と東京を往復する費用補助については2回までだったところ5回往復して半分以上は自己負担でした。あと、結局保育園自体が多く、空きがあり入りやすい名古屋の中心の地域に住むしか選択肢がなく、住宅補助制度の条件と全然金額がマッチしなくて住宅補助制度を受けられず、全額自己負担になってます。」
「私はリモートワークができたことで転勤に伴って仕事を辞めなくて済んだので、働き方の柔軟性が整っていくといいなと思います。保育園のお迎えや子どもの用事で仕事を中抜けするっていうことが制度的にも社会的にもしやすくなるといいですし、男性も女性も、子どものお迎えなどにあわせて帰宅できるようにすると育児の負担が偏ることもないのかなと思っています。」
●コドモン プロダクト開発部 リプレイスグループ 重田 桂誓
パートナーの就職活動、引越し、保活、すべてが重なった家探し・保育園探しを経験
「やっぱり保活においては、働き方の部分が重要になってくると思います。僕自身はIT系の業界で特にウェブサービスとかスマホアプリとか作ってるような業界にいるので、リモートワークもできるし転勤もなかったり、育休も取りやすい状況があったり、恵まれている環境ではあるなと思いました。こういった働き方の柔軟性っていうのがすべての人たちに広がっていくようになるといいなって思います。」
「朝から晩まで1人で育児をしたことない男性がいたら、その大変さを1回経験してみることで課題の強さ、みんなの困り具合がしっかりわかって、解決していこうって思えるのではないかと思います。現状、政治の場や企業でルール策定に関わっている方は男性が多いので、そういった方たちが子育ての大変さを実感することが大事かなと思います。」
全文は以下のニュースレター記事でもぜひご覧ください。
子育て中メンバー、そして子どもたちの人生のために 企業として考えたいこと
「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」というミッションを掲げる私たちだからこそ、企業のみなさんとこの課題について考えていきたいと思い、まずは問題点を可視化することをはじめの一歩として発信にいたりました。この発信は、現状に対してただ非難するのではなく、多くの方と一緒に改善に向けた声をあげていきたいという想いを込めています。
1人でも多くの企業の方の考えるきっかけになると嬉しいです。多様な働き方が推奨される時代において、企業は社員自身だけでなく、その社員のパートナーのキャリアや子どもにも大きな影響があることを理解する必要があると考えています。私たちもまだまだ実現できていないことはたくさんあるので、みなさんと考えながら、よりよい社会を目指したいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!