スポーツジムは、高等遊民の、聖なる運動サロン説。
この説の支持者、わたし以外にも、いるよね?
デスクワークで、縮めに、縮めた寿命と健康を、奪還すべく、運動習慣を、手に入れたい。その習慣に、亀仙人(ある意味、亀専任)と化した、インドアの権化が、外の世界に飛び出すきっかけと、「わたしぃ、ジム行ってるんですけどぉ、」っていう、スクールカースト上位の枕詞を、上乗せして、ゲットしたいという魂胆。今日も、卑しい。
しかしだ。スポーツジムという、あの、異質な空間に、どういうわけか、極度の緊張と、萎縮をしてしまう。
今まで、2か所のスポーツジムに、入会したが、どちらも、気恥ずかしさに負けて、ろくに続かなかった。入会という第一関門を突破して、すぐに通わなくなり、持続可能な即退会を、繰り返す。まさに、入会金のSDGs。
まず、ランニングマシンの使い方すら、分からない。スタートボタンの位置が分からず、慌てふためいた結果、主電源を切ってしまったことがある。猛者と、お呼び。
窓辺に沿って、ずらっと並んだランニングマシンに乗って、三者三様、みんな、外の世界に出たそうに、歩いている。まるで、愛亀が、水槽の端で、こちらに向かって、必死に泳いでいるみたい。(僻み)
これ以上、先に進めない洞窟の壁に向かって、コントローラーの十字キーを押し続け、壁に向かって全力足踏みする、RPGの主人公みたいではないか。(僻み×2)
それに、スポーツジムには、黒光りムキムキマッチョマンか、栗原ジャスティーンみたいに、ピチピチのタイツを履いた種族(もはや履いていない)しか、通っていない気がする。(確実な偏見。)
もしくは、時間も、お金も持て余した、高等遊民が、有り余るお金と引き換えに、健康と人脈と節税のために通う、運動サロンか。(もっと偏見。ここは白金か。)
そんな集団の中に、パジャマみたいな格好で、呼ばれて飛び出た、平民素人が混在する、恥ずかしさったらない。
昨日、弟に会った。どうやら、最近、高等遊民の運動サロン(意訳:スポーツジム)に入会したらしい。もともと、運動習慣のある人間だからまだ良い、ランニングマシンに乗れない民族ではないのだ。
しかし、聞くところによると、黒光りムキムキマッチョマンは、圧倒的少数で、なんと、栗原ジャスティーンは、どこを見渡しても、いないとのこと。どちらかというと、ダッフィーみたいな、ぬいぐるみ体型、もしくは、つまようじのように華奢なヒト属ヒトが、大多数を占めているらしい。
でも、いくら、高等遊民のサロンでない現実を唱えられても、通い続ける自信が湧かない。
ヒト属ヒトの、ゼリー寄せみたいな場所が苦手で、借りてきた亀みたいに、端っこで、萎縮に固まってしまう。ポカリスエットを飲むほど汗をかけず、ただ、辛酸を舐めて、帰ってくる姿が、目に浮かぶ。
「それなら、家で、チューブトレーニングをしたらどう。」
細長いチューブ状の、ラテックスバンドを伸ばしたり、縮めたりして、ストレッチや筋トレを行うというもの。それなら、お金もかからず、一目も気にせず、狭い木造ボロアパートでも、簡単に始められるとのこと。
グッジョブ、マイブラ。そんなこと、言われるまで、気付かなかった。8畳ほどしかない部屋の中で、家具の隙間を縫いながら、マットを敷いて、YouTubeを見ながら、ヨガをするには、手狭を極めていた。ソファーに腕をぶつけながら、礼賛していた。
思い立ったが、吉日。さっそく、チューブバンドを買ってこよう。
愛亀は、ヨガも、ランニングも、ストレッチも続かない飼い主を、一番近くで見てきた。今回も、どうせ、続かないに、単勝で、賭けている。オッズ予想を大荒れにしてやろう。
まずは、ソファーから、重い腰を上げて、買い物に行かなければいけない。この後、ソファーでうたた寝する飼い主に、これまた、単勝全額を掛けている、愛亀との、仁義なき戦いが、すでに始まっている。