千夜千首#3/噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし
こんばんは! 毎日歌を詠みつつ「心のお守り」になるような言葉を探したり、詠んだりしているつくだ@書籍編集×作家です。普段は文章を書いたりまとめたりする仕事をしています。
各歌人さんの歌の魅力をじっくり味わっていただくため、本連載では1週間にわたって歌人さんの短歌を1首ずつお届けしていきます。今週は小島なおさんの作品をデビュー作『乱反射』からご紹介しています。
噴水に
乱反射する光あり
性愛をまだ知らないわたし
「性愛をまだ知らないわたし」という下の句にドキッとしました。あなたはどうでしたか。思春期の心の揺れ動きが伝わってくるような歌ですよね。
わたしは、この句から相反する二つの感情を受け取りました。それは「性愛とはどんなものなのだろう」というある種の憧れと、未知の世界に対する不安です。それは「性愛をまだ知らないわたし」という存在ががもつ純粋さと危うさでもあります。
小島さんは、このような繊細な心の動きを、平易な言葉でありながら、見事に表現しています。「噴水に乱反射する光」という比喩も秀逸で、思春期の複雑な心理を鮮やかに描き出しています。
その勢いよく吹き出す水の様子は、思春期特有のはち切れそうなエネルギーの発露の暗喩ともとれます。そして「乱反射する光」とは性愛に対するある種の憧れや不安を表している可能性が読み取れます。
本書には、小島さんが17歳から20歳にかけて詠んだ歌が収録されています。まさに思春期の「心の乱反射」が瑞々しい言葉で紡がれた歌集と言えるでしょう。
今日もまた、実に味わい深く素晴らしい歌に出会いました。感謝!
小島なおさんのプロフィール
1986年東京都生まれ。93年から94年までお父様の仕事の都合でアメリカで暮らしていらっしゃいます。お母様(小島ゆかりさん)の手伝いをしていて、短歌に興味を持ち、日経歌壇に投稿をはじめ、2004年に第50回角川短歌賞を受賞。その後も、第一歌集『乱反射』で第8回現代短歌新人賞、第10回駿河梅花文学賞を受賞するなど、数々の賞を受賞されています。
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かの大編集者・松岡正剛さんの人気連載「千夜千冊」のごとく、毎夜にわたり、おすすめの現代短歌を一首ご紹介していく連載企画「千夜千首」、お楽しみいただけたでしょうか?
それぞれの歌についてわたしなりに解説していますが、その解釈にかかわらずご自由に解釈して楽しんでいただけたら幸いです。もしよければ、その感想をコメントにお寄せいただけたらとても嬉しいです。
明日も一首、心に刺さる短歌を紹介していきます。
どうぞお楽しみに!
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