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【今日の短歌】空腹で頭回らず歌も出ずまずは食事と薔薇の香りを
こんにちは! 生きづらい社会の中で、心がスッとラクになる「言葉のお守り」をお届けするつくだ@書籍編集×作家です。今日の短歌は、こちらです。
♪いただきました!
— つくだとしお@書籍編集×短歌 (@toto_books) October 15, 2024
ありがとうございます!
空腹で頭回らず歌も出ずまずは食事と薔薇の香りを
『 食 』 つくだとしお #うたの日 #tanka https://t.co/8nu3DpfGi8
空腹で頭が回らない…そんな経験から生まれた短歌が、歌会で1票を獲得しました!
今回は「うたの日」の歌会(投票で一番いい短歌を決めるイベント)で、食をテーマに挑戦してみました!
結果は1票。ゼロ票にならなくてよかったと胸をなでおろしています。
1票入ったということは、この歌に何かしら魅力を感じていただいたということですよね、ありがとうございます。嬉しいです!
今回の振り返り
さて、今回のお題は「食」でした。
そこで食というお題から今回は、いろいろと考えました。
最終的に6首ほど生まれました。そのなかでどちらを投稿しようかと最後まで迷ったのがこの一首です。
月食の妖しき光ふらふらと
見惚れるうちに抱きしめていた
皆さんなら、どちらの短歌を選びますか?
私は悩んだ結果、タイトルに挙げた短歌を選びました。
理由は、そのとき朝から仕事をしたり短歌を詠んだりと、食事もろくにとらずにパソコンに向かっていたので、めちゃくちゃ空腹でした(笑)
そこで実感として、歌を詠むにもまずエネルギーが必要だと思ったんです。その結果が歌として形になったのが今回投稿した歌です。この歌はいわば「食べたい」という私の本能から生まれた歌なんですね。
空腹というのは人間にとって普遍的なものですし、本能に根ざしている分、歌として読者さんの共感度が高いのではないかと考えて、結局「月食」よりも「空腹」の歌をとりました。
ちなみに今回の首席となったのは、すでに歌集も出版されているプロの歌人toron* さんでした。このプロアマ入り交じった歌のバトルが「うたの日」歌会の面白さでもあります。
比喩表現をもっと学ぶ
話を戻しますと、今回は一票獲得という結果でした。
では、どこを改善すればよかったのでしょう。
一つ思ったのは、下の句の普通さです。
「まずは食事と薔薇の香りを」
内容はわかりますが、
これだとするっと読み過ごしてしまいかねませんよね。
読者をつかむには強い言葉が必要です。
そこで登場するのが「比喩表現」。
比喩とはあるものを、他のものになぞらえて表現する技法です。ざっくり分けると直喩、隠喩(メタファー)、擬人化の3つがあります。
直喩とは、直接たとえるものを「~のように」などの言葉で直接的に示す比喩の方法です。例えば「石のように硬いパン」というと、その硬さが迫ってきますよね。
そして隠喩とは、あるものを別のものになぞらえて表現する技法です。例えば、「彼の心は氷」のように、たとえる対象を直接的に示すことで、より強い印象を与えます。
最後の擬人化は人間以外のものを、人間のように扱う表現技法です。例えば「秋が咲いた」「花が笑った」など表現すると親しみが湧きますよね。このような効果の他、「感情移入しやすくする」「抽象的な概念を分かりやすくする」という効果が上げられます。
比喩表現をする5つのメリット
では、比喩を使うと何がいいのでしょうか。
まずは短歌に奥行きが出てきます。
5つに分けてお話ししていきましょう。
その1)比喩を使うと情景や感情を鮮やかに表現できる
例えば、「夕焼けがきれいだ」と書くよりも、「夕焼けが燃えているようだ」と比喩を用いることで、夕焼けの赤色の鮮やかさや、燃えるような力強さがよりリアルに伝わります。
その2)短い言葉で多くの情報を伝えることができる
例えば、「彼は悲しんでいた」と書くよりも、「彼は石のように固まっていた」と比喩を用いることで、彼の悲しみの深さや、動揺している様子などが、より効果的に伝わります。
その3)読者の想像力を刺激してくれる
例えば、「彼女の心は閉ざされている」と書くよりも、「彼女の心は冬の湖のように凍っている」と比喩を用いることで、読者は、冬の湖の冷たさや静けさを想像し、彼女の心の状態をより深く理解することができます。
その4)短歌にリズムや音楽性を与えることができる
例えば、「雨がしとしとと降っている」と書くよりも、「雨は絹糸のように降っている」と比喩を用いることで、「しとしと」よりも「絹糸」の方が、言葉の響きが美しく、短歌にリズムが生まれます。
その5)短歌に意外性や面白さをもたらす
例えば、「彼は怒っている」と書くよりも、「彼は火山のように噴火した」と比喩を用いることで、彼の怒りの激しさがユーモラスに表現され、短歌に面白みが加わります。
下の句というオチに工夫を凝らす
また、57577という形式をもつ短歌において、下の句の77はいわばオチです。オチが弱いとやっぱりグッと心をつかめません。
他にも理由があると思いますが、今回の短歌において一番振り返るべきは比喩表現の弱さでした。そこで修正したのが以下の一首です。
空腹で頭回らず歌も出ず
五臓六腑に染み渡る飯
ここで使われている比喩は「隠喩(メタファー)」です。あるものを別のものになぞらえて表現することをいいます。
この短歌では「五臓六腑に染み渡る」という表現で、液体にしみ込む感覚にたとえて、より深く食事の満足感を伝えています。ちなみに比喩表現のメリットとしてあげた「~のようだ」という技法は直喩と呼ばれています。
そして、そこに花を添えているのが「飯」という言葉です。
これは比喩表現ではありません。しかし結句を「飯」と名詞(体言)で止めることで、「五臓六腑に染み渡る」と言う表現の存在感をより強めているのです。
その他、読者の注意を引きつけ、印象に残るようにする効果や、余韻や響きを与える効果、作者の感情を強調する効果などがあります。多用しすぎるとうるさい感じになりますが、ポイントで使うと絶大な効果を発揮します。
結果として、下の句に奥行きが出て「食べることの幸せ」まで伝わってくるように私は思いました。
noteを書かれている方ならご存じの内容も多いと思いますが、私自身の復習のためにもご説明しました。
私は短歌とは31文字の中に「言葉としての美」を突き詰めつつも、「言葉のお守り」を盛り込むことができないかと考えています。例えば、こんな歌。
人はみな特別デコボコだからこそ
二人一緒にいる意味があるんだ
読んでいるだけで心があたたかくなったり、支えられるような気がする。そんな「言葉のお守り」を時として、詠んでいきたいのです。これからも、短歌を通して、皆さんの心に寄り添い、明日を生きる力となるような言葉をお届けしていきます。
この歌が、あなたにとって一つのお守りになってくれますように。
そして、みなさんにとって明日がよい日でありますように✨
本当に長い文章を最後まで読んでくださりありがとうございました。
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(おはよう短歌、はじめました)
私は人生の記憶や一瞬を、ショート・ムービーのように31文字の中に収めることが面白くてほぼ毎日短歌を詠んでいます。きれいな花や風景をみたらスマホで撮るようなものですね。
そして、短歌好きの皆さんともっとコミュニケーションを図りたく、X(旧Twitter)で「#おはよう短歌」という活動を始めました!
毎日「#おはよう短歌」のハッシュタグとともに、朝にちなんだ短歌を投稿しています。
とはいえ「おはよう短歌」と言いつつも私も遅くなることがありますし、投稿する時間は特に決めていません。
朝、昼、晩、いつでもOKです!
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ご興味のある方は、ぜひXで「#おはよう短歌」と検索してみてください。
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皆様にとって、「誰もが心の疲れを癒やし、そして再出発に向けて力を蓄えるための場所」と、このnoteがなりますようにこれからも尽力していきます。どうぞよろしくお願いします🙇
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