初めてのBCP:企業が備えるべき非常用備蓄品
日本は地震大国です。令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、交通網が遮断され、配水管破損により、震源地に近い能登町では4ヶ月間も断水していた地域があります。
また、地震以外にも台風や豪雨による洪水被害が近年増加しています。
万一、自然災害が発生した際には企業は従業員や来訪者の安全を守るために事前の備えが必要です。
今回はBCP策定で即効性のある災害・防災備蓄品についてご紹介します。
必要な備蓄品の基本: 何を備えるべきか
企業の災害・防災の備蓄義務として、東京都が2013年に制定した「東京都帰宅困難者対策条例」がひとつの目安となっています。この条例は、2011年3月11日に発生した東日本大震災による交通網の運行停止で多くの帰宅困難者が発生したことを契機に制定されました。
発災後3日間は救助・救命活動を優先するため、事業者は従業員の一斉帰宅が救助・救命活動の妨げにならないよう発災後3日間は施設内に従業員を待機させることを推奨しています。では、1人あたりの3日分の備蓄量を見ていきましょう。
食料と水の確保:
1.水
災害・防災備蓄品として欠かせないのが飲料水です。飲料水があれば、アルファ米をはじめとした非常食を食べられる状態にしたり、常備薬を飲むなど安心です。
通常のペットボトル入りの飲料水が賞味期限2年程度ですので、ローリングしながら定期的に入れ替えていくか、保存期間が5~10年程度の長期保存タイプの飲料水を用意するか、各企業のお考えに基づいて選択すると良いでしょう。
なお、水洗トイレなどの生活用水は別に用意します。
2.主食
水道や電気ガスが止まることを想定し、調理が不要な食料を備蓄します。
昔は食料備蓄というと乾パンが一般的でしたが、負担の食事と同じように美味しく食べられるアルファ米を用いた非常食が多数用意されています。
(1)アルファ米
アルファ米は一度炊いたお米を乾燥させたもので、水やお湯を加えるだけで食べられるご飯です。水やお湯を注いで待つだけで美味しいご飯ができあがります。アルファ米の「アルファ」とは、お米のデンプンを示す言葉で、生のデンプンに水と熱を加えて「アルファ化デンプン」にしたものを乾燥させたものです。
アルファ米を用いた非常食には五目ご飯など多くの種類があり、Amazonなどで「アルファ米」で検索できます。その他にも乾パンやクラッカー、カップ麺などもおすすめです。
(2)その他の副菜
アルファ米や乾パン、クラッカー、カップ麺などは手軽ですが、栄養分が炭水化物に偏りがちです。このため、缶詰やサプリメント、カロリーメイトなどの栄養補助食品、食物アレルギーに対応した食品なども備蓄しておくと安心です。
3.毛布などの防寒用品
災害はいつ発生するかわかりません。防寒対策として毛布や非常用防寒・保温シートを準備することが大切となります。
(1)災害備蓄用毛布
災害備蓄用の毛布は持ち運びがしやすいように軽くコンパクトに作られており、手のひらサイズぐらいに小さくなるものもあります。また、真空パックに入れられており、保管中にカビが生える心配もありません。
(2)非常用防寒・保温シート(エマージングシート)
薄手の保温素材で作られた防寒用シートは、防水性や防風性にも優れており、体を包めば体温を逃がすことなく、ブランケットとして使えます。エマージェンシーシートにはいくつか種類があります。
アルミシートタイプ:極薄の素材で携帯性に優れる
ポンチョタイプ: フード付きのブランケットで頭から防寒できる
厚手タイプ:マットのような厚手の素材で、敷き布団代わりになる
寝袋タイプ:体をすっぽり包み込める形状
手軽なのが極薄で携帯性も良好な「アルミシートタイプ」ですが、カサカサと音がするものもあります。静音タイプのエマージェンシーシートは「カサ音が少ない 静音」などの説明がありますので、こうした静音タイプを選ぶとよいでしょう。
4.その他あると便利なもの
(1)救急キット
応急処置に必要な医療用品や救急キット
(2)生活必需品と衛生用品
トイレットペーパー、タオルなどの生活用品
(3)通信機器とバッテリー
災害時の連絡手段として必要な通信機器や予備バッテリーの準備しておくことを推奨します。
①MCA無線
災害時の通信機器として一般的なのはMCA無線です。総務省のHPでも紹介されている災害時に有益な通信機器で、中継局を中心に半径30km程度のサービスエリアを持つ通信システムで、災害時の本部と現場・避難所間での電話連絡に使われます。
①充電器
停電時でも充電器があれば、通信機に電気を供給できます。充電器として手軽なのがモバイルバッテリーですが、スマホやタブレット以外の機器を使用する際におすすめなのがポータブル電源です。
最近では太陽光発電設備とともに蓄電池をセットで保有する企業も増えていますが、蓄電池を保有していない拠点では、通信機器用にポータブル充電器を設置していると安心です。ポータブルバッテリーには様々な種類がありますが、業務用で使用されるのであればバッテリー容量2,000Wh以上のもの、社長宅など幹部のご自宅に設置する場合は1,000Wh以上の容量の製品を用意することを推奨します。
防災グッズには様々な製品が販売されています。迷ったら、防災安全協会の防災・防疫推奨品カタログを参考にするとよいでしょう。
防災安全協会 防災推奨品 2024
https://bousai-anzen.com/recommend.html
執筆者:永見拓也
BCPコンサルタント・公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員リスクコンサル会社にて製造業、運送業のBCP/BCM策定コンサルティング業務に従事。
現在、大手損害保険会社にて事業継続力強化計画やBCP策定支援等のリスクマネジメント推進業務を担当。
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・本記事はCloudBCPブログの転載です。