阪神淡路大震災を超えた令和6年能登半島地震!見直されるBCP
この度の令和6年能登半島地震により、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
2024年1月1日(月)16時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード 7.6 の地震が発生しました。この地震により、最大震度 7 を石川県の志賀町と輪島市で観測したほか、北陸地方を中心に北海道から九州地方にかけて震度6強~1を観測しました。
この地震の規模は、1995年に発生した阪神淡路大震災や2016年に発生した熊本地震を大きく上回る規模となっています。
今回は令和6年能登半島地震の特徴と企業の地震対策について取り上げます。
1.阪神淡路大震災を超えた令和6年能登半島地震の概要
発生日時:2024年1月1日16:10
震源地:石川県能登地方(北緯37.5度、東経137.3度)
地震規模:マグニチュード7.6
震源の深さ:16Km
各地の震度(気象庁発表):震度6弱以上の地震が次のエリアで観測されました。
石川県
震度 7 志賀町、輪島市
震度 6 強 七尾市、珠洲市、穴水町、能登町
震度 6 弱 中能登町
新潟県
震度 6 弱 長岡市
2.令和6年能登半島地震の特徴
(1)阪神淡路大震災を超えた令和6年能登半島地震
能登半島地震の大きさを近年発生した地震比較すると、阪神・淡路大震災(1995)の9倍や熊本地震(2016)の4.5倍と大規模な地震であることがわかります。
出所:北陸財務局
https://lfb.mof.go.jp/hokuriku/content/006/2024020101.pdf
出所:東北大学
https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/disaster/eq/Noto-eq_debrief0109_1-1_toda.pdf
(2)大津波警報が発令
今回の能登半島地震では、広域の津波が発生しました。
大津波警報が発表されたのは2011年の東日本大震災以来となります。
出所:東北大学
https://irides.tohoku.ac.jp/media/files/disaster/eq/Noto-eq_debrief0109_2-1-1_imamura.pdf
今回の津波の特徴として次のような特徴が見られます。
① 第一波が早く、継続時間が長い
② 遠浅海岸での発生で、津波がぶつかり合い波高が増幅
③ 避難が難しく、家屋被害や沿岸防災施設被害が発生
地震による倒壊と地震後の火災、津波による複合災害により、能登半島地震は被害が拡大したと言えるでしょう。
(3)企業の被害と再開状況
発災から1ヶ月近く経過した1月25日の時点では、製造業の業種間で復旧のスピードに差が生じています。
① サプライチェーン関連企業を中心に約9割が再開目処立つ
建物や設備の損傷等の被害が多数発生しているが、被災地域域外のサプライチェーンにも影響を及ぼしうる業種については、約9割が生産を再開又は再開の目処が立っている状況
② 2割強の企業が生産再開の目処が立たない業種
繊維、工芸品、印刷製造業では、2割強の企業において生産再開の目処が立っていない状況。
石川県内で被害が大きく、特に、小規模事業者が多い奥能登では壊滅的とする声もある。
出所:北陸財務局(令和6年2月1日)
https://lfb.mof.go.jp/hokuriku/content/006/2024020101.pdf
一方、サプライチェーンに関連する多くの企業では、BCP認定制度一覧策定と複数社からの調達体制を構築しており、他社製品で代替することで自社の生産への影響を回避する企業も増えています。
北陸財務省が公表した企業の声によると、実際に調達先を変更していると回答する企業も出ていました。
(生産用機械) 一部補修のみで大きな被害なし。能登の複数社から部品を調達しているが、他社で代替可能。また、在庫も有しており、生産への影響なし【石川】
(部品)一部の仕入先(石川、富山)が被災したが、一時的に取引先を変更しており、今のところ生産の減少は見込まず【福井】
出所:北陸財務局
https://lfb.mof.go.jp/hokuriku/content/006/2024020101.pdf
(4)能登半島地震で企業防災の意識高まる
帝国データバンクの調査によると、能登半島地震により自社の企業活動に影響があると考える企業は全国で13.3%、北陸に限定すると43.2%と、北陸に限定すると4割の企業が「影響がある」と回答。
自社の設備の損害など直接的な影響を挙げる一方で、被災地以外のエリアでは「金属製品の納入を検討していたが、取引先の工場が被災して納品時期が不明とのことで、別製品に切り替えることになった」などサプライチェーン途絶による影響を挙げる声が聞かれました。
こうした能登半島地震を景気に94.9%の企業が「防災対策」の必要性を実感。改めて大切だと考えた防災対策は次の通りです。
出所:帝国データバンク
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p240109.pdf
こうした企業防災対策はBCP(事業継続計画)を策定していれば、すべて充足可能な対策で有り、改めてBCP策定の大切さが再認識されたと言えます。
(5)BCP(事業継続計画)の役割
BCPは、災害や緊急事態が発生した際に、企業や組織がその影響を最小限に抑え、迅速に事業活動を再開するための計画です。能登地震のような予期せぬ災害が発生した場合、事前に策定されたBCPは、人命の保護、事業の継続性の確保、そして経済的損失の軽減に不可欠な役割を果たします。
今回の能登半島地震において、BCPを事前に策定していた企業や組織は、地震発生時の混乱を大幅に軽減することができました。これは、BCP策定過程においてリスク評価を通じて地震による潜在的な影響を事前に把握し、必要な資源や対応手順を準備していたことが早期復旧につながったと言えます。
BCPが効果的であった事例をご紹介します。
(1)震度6弱の被災から1週間で生産再開
織機の基幹部品や検査装置を製造するT社は、2018年にBCPを構築。
今回の地震で、海外向け製品の7割を製造する基幹工場が震度6弱の揺れにより被害を被ったが、BCPに基づく迅速な安否確認や状況把握により、1週間で生産再開
BCP策定により地震に備えて日頃から終業時にベルトで固定する作業により被害を最小限に抑えられた。
震度5弱の揺れで自動的に安否確認するシステムを導入。地震発生の翌日には社員全員の無事を確認し、BCPに沿って災害対策本部を立ち上げ、1月7日には復旧をほぼ完了。
出所:朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASS215DFJS1YULFA03P.html?pn=10&unlock=1#continuehere
(2)攻めのBCPでビジネスチャンスを獲得
貸し切りバスやスクールバスを運行するM交通
被災後、速やかに従業員10名の安否確認と事務所・バスの状態を確認
BCPを策定していたことにより資金繰りや速やかな融資による資金手当
能登空港で孤立した人々を金沢市内まで送り届けたり、被災地支援に入る自治体職員の送迎を担うなど、震災に伴うビジネスチャンスを獲得。
出所:朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASS215DFJS1YULFA03P.html?pn=10&unlock=1#continuehere
おわりに
令和6年能登半島地震は、BCP策定の重要性を改めて浮き彫りにしました。特にサプライチェーン関連企業では、早期復旧・供給責任が求められており、BCP策定による早期復旧の必要性が再認されたと言えます。
今後は、より多くの企業や組織がBCPを策定し、定期的な見直しと訓練を実施することが想定されますので、取り残されないためにもBCP策定は必須の時代となったと言えます。
また、BCPの策定においては、企業や組織だけでなく、地域社会との連携も重要な要素です。災害発生時には、地域全体での協力が復旧・復旧を加速させます。そのため、地域の防災計画との連携や地域共同で訓練を行うなど地域と連携したBCP策定や訓練も効果的です。
なお、BCP策定済み企業には策定したBCPの高度化に継続して取り組むとともに、地震だけでなく、洪水や感染症流行など、多様なリスクに対応できるようBCPを策定することを推奨します。
執筆者:永見拓也
BCPコンサルタント・公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員リスクコンサル会社にて製造業、運送業のBCP/BCM策定コンサルティング業務に従事。
現在、大手損害保険会社にて事業継続力強化計画やBCP策定支援等のリスクマネジメント推進業務を担当。
BCPの策定から訓練、継続した運用にも対応できる「CloudBCP」
CloudBCPはBCPを最短5分で策定できるWebサービスです。トレーニング機能を始めとする運用機能や、安否確認機能などもアプリの中で使え、BCP活動を完結することができます。
最初のBCPをとにかく簡単に作り、その後の訓練を通して見直していく事が、実践的に使えるBCP活動には不可欠です。無料デモを行っておりますので、お気軽にご連絡ください。
・本記事はCloudBCPブログの転載です。