BCPを職員に周知しておく効果的な方法3選
令和6年にほぼ全ての介護事業所で策定が完了したBCP(業務継続計画)。皆さんの施設では、どのくらいのスタッフがその内容を知っているでしょうか。
単純かつ重要な話ですが、BCPは管理者や主任だけでなく全てのスタッフがその内容を知っておかないと、発動時その効果を発揮することができません。
今回の記事ではスタッフ一人ひとりがBCPを自分ごととして捉え、災害に見舞われても迅速に行動できるよう、日ごろから周知しておくためのポイントをお伝えします。
自然災害BCPの作成、運用のポイント(ガイドラインより)
国が示しているBCPガイドラインでは、作成および運用について次の4つのポイントを紹介しています。
正確な情報集約と判断ができる体制を構築
自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて、同時にその対策を準備
業務の優先順位の整理
計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練
ここで最も重要なのは、4つ目の「普段からの周知」です。これは記載内容だけでなく、BCPそのものの存在や閲覧手段も含めた周知が必要だということです。1~3の内容を具体的に決めたとしても、その内容が全体に周知されていなければ、それは「絵にかいた餅」で終わってしまうのです。
<参考:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン、P7」>
BCPを自分ごとにする3つの方法
ここで紹介するのは、実際に施設で取り組めそうな3つの方法です。管理者など事業やスタッフを管理する立場の人なら是非参考にしてください。
①訓練で実際に使ってみる
介護事業所ではBCPを用いた訓練を年1回以上おこなわなければなりません。
これは出来上がった計画を定期的に更新し、災害時にその効力を最大限発揮させることが狙いだからです。
訓練や研修など少なくとも年1回はスタッフの目に触れる機会を設けられるので、「この部屋は土砂崩れが起きやすい」「少ない人数でも優先順位を決めておけば安否確認ができそう」などといった、災害時に起こるイメージや業務を共有することができます。そして、こういったシミュレーションが、より具体的な災害対策や業務改善につながるだけでなく、自分事として災害と向き合えるきっかけになるのです。
②なるべく多くのスタッフで策定、修正する
もし事業所のBCPが限られたスタッフだけで作成されていたり、十分検討されないまま記載されたりするのであれば、管理者は、今後できるだけ多くのスタッフの声を計画に反映するように心掛けましょう。
なぜなら介護施設では介護職だけでなく、看護師や介護支援専門員など様々なスタッフが働いており、同じスタッフでも業務内容は異なるからです。たとえば、もし停電が発生した場合、パソコンが使用できずに業務が停止するケアマネジャーがいたり、看護師が適切な医療ケアが提供できなかったりなどの影響が出てしまいます。どのような状況になれば、どの職種が困るのか、ということを把握するためにも、色々な職種でBCPを見直しましょう。
また、働いている職員個々の生活や環境も考慮することを忘れてはいけません。単身者や子育て世代、シニア世代や遠方在住者など生活スタイルが違うので、災害時でも通常と同じ行動ができるとは限りません。つまり、各スタッフの事情を考慮したBCPでないと、災害がおこっても「自分には関係ない」と思ってしまうだけでなく、「施設はスタッフの事情をわかってくれていない」と不信感を招く結果にもなりかねないでしょう。
こういった事態に陥らないためにも、災害対策委員会を設置しチームで取り組むことをおすすめします。担当者だけ、少人数のスタッフだけではBCPの運用には限界があります。また、訓練や研修企画、地域連携は役割を決めておこなうほうが効率が良いので、多くのスタッフが日頃から災害対策に関われるようにしておきましょう。
③いつでも見られる環境にしておく
BCPや業務マニュアルは、「作成して終わり」という事になっていませんか?
介護業界でもICTが進み、勤務表や記録などデータ化している施設もあります。とくに最近では、停電やセキュリティ対策としてクラウド環境により書類を運用しているところもあります。BCPもクラウドを活用して、いつでも、誰でも内容を見られるようにしておけば、「どれが最新版が分からない」「事業所に出勤しないと利用者情報がみられない」などといった書類を探す手間や二次災害を防ぐこともできます。
職員の意識向上に効果がある
この表は、2022年中小企業庁が公表した白書の一部です。BCPを策定したことにより職場にどのような影響があったのか、一般企業をターゲットに調査がおこなわれました。
最も多かったのは、「従業員のリスクに対する意識が向上した」という項目であり、次に「事業の優先順位が明確になった」という結果だったことが分かります。これは、BCP策定をしたことで、災害発生時の業務を見直し、何を優先していなければいけないか、という職員の意識向上に効果があったともいえます。
筆者は、同じ効果を介護施設においても期待できると考えます。産業や業種の違いはあれど、平時にどれだけ災害を意識できるか、いつ災害に見舞われるかわからない、という危機感をいだくことが、BCP策定で得られる一番の効果であるといえます。
<参考:2022年版中小企業白書
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/chusho/b1_1_5.html>
まとめ
最初に作ったBCPを、長い間修正をしないまま災害対策の指標として活用することは、まずないでしょう。とはいえ、なるだけ完成度の高いBCPを最初につくって、見直しの頻度をおさえたい、という作成担当者の気持ちも理解できなくはありません。
筆者が研修で全国の施設管理者に伝えているのは、はじめから100点のBCPをつくろうと思うのではなく、40点くらいの計画をまず叩き台として作成して、その後たくさんのスタッフで多角的に100点に近づけていくほうが、より良いBCPが作れるということです。
訓練や研修の実施が義務化されている背景には、定期的に現場とBCPのギャップを見出して、より具体的な内容にブラッシュアップするということがねらいとしてあります。そしてなにより、その前提条件としては、全てのスタッフにBCPを周知しておくだけでなく、常に自分事として災害への危機感を持っておく必要があるのです。
執筆者: 柴田崇晴
日本介護支援専門員協会 災害対応マニュアル編著者
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・本記事はCloudBCPブログの転載です。
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