アカシの小さな冒険 第4話

アカシは、目の前に広がる風景を見渡しながら、深く息をついた。自分が今どこにいるのか、すぐに理解した。茶色の塔のようなものが無数に立ち並び、肌色の広大な大地がその下に広がっている。ほんのりとした温かさと、リンスのような柔らかい香りが漂っていた。

「ここは…彼女の頭の上か…。まさか飛ばされてこんなところに来るなんてな…」

アカシは苦笑しながら、冷静に状況を把握し始めた。彼女に飛ばされた瞬間、あまりにも高く舞い上がったことに気づかなかったが、どうやら彼女の頭頂部に降り立ったらしい。巨大な髪の毛がまるで森林のように立ち並んでいるその光景は、現実離れしていた。

「とにかく、早くなんとかしないと。まずは耳に行くしかないな…」

アカシは覚悟を決め、3センチまで体を大きくし、髪の毛を伝って移動を始めた。しかし、進む道のりは簡単ではなかった。突然、彼女の手が頭を掻き始めた。

「ちょ、ちょっと待て!いきなり掻くなよ…!」

彼は間一髪で手を避けたものの、次の瞬間、彼女が首を横に傾けたことでバランスを崩し、髪の毛から滑り落ちそうになった。

「危ない、危ない!落ちたらお終いだ…!」

アカシは必死に髪の毛にしがみつき、なんとか持ちこたえた。しばらくして彼女が動きを止めると、再び耳に向かって慎重に進んでいった。彼女の動きに翻弄されながらも、ついに耳の近くにたどり着いたアカシは、再び体を小さくし、ダニサイズになって耳の穴に向かって進み始めた。

「よし、あと少し…」

耳の外縁を慎重に下りていくと、目の前に巨大な耳の穴が現れた。その入り口は、まるで鍾乳洞のように暗く、奥が全く見えない。

「これは…まさに洞窟だな…」

アカシはスマホを取り出し、ライトを点けて耳の中を照らした。耳毛が茂っており、その間には耳垢がこびりついていた。足場は悪く、彼は一歩一歩を慎重に進めなければならなかった。

「彼女、耳掃除してないのか?進むのが一苦労だな…」

アカシは苦笑しながらも、なんとか耳の中を進んでいく。彼の体は小さくとも、耳の中は広大で、まるで森の中を進んでいるような感覚だった。やがて、鼓膜にたどり着いたアカシは、ここであるものをだした。

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