アカシの小さな冒険 第3話
アカシは、家に帰るとすぐにベッドにダイブした。長い一日だった。体中が疲れていて、ただゴロゴロと横になる以外、何もしたくなかった。
「今日は本当に疲れた…」
そのまま目を閉じて5分ほど経った時、突然、インターホンが鳴り響いた。
「誰だ…?」
面倒そうに体を起こし、少し考えたが、ドアを開けに行く気力はなかった。彼が耳をすますと、ドア越しに女性の声が聞こえてきた。
「すみません、保険のご案内です」
「保険か…興味ないな」
アカシはため息をつき、居留守を決め込むことにした。電気も消していたし、これなら相手も諦めるだろうと考え、再びベッドに身を沈めた。
しかし、思いがけないことが起こった。静寂が30秒ほど続いた後、突然、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「ガチャッ…」
「失礼します」
その声に、アカシの全身が凍りついた。
「な…なんだ…?」
彼は瞬時に状況を把握しようと頭を働かせた。なぜドアが開いたのか。もしかして、鍵を閉め忘れていたのだろうか?それとも、相手が特殊な手段で開けたのか?どちらにせよ、侵入者が家に入ってきたのは確かだった。
「まずい…!」
アカシは慌てて携帯を取り出し、警察に通報しようとした。しかし、画面を見ると信じられないことに、電波がまったく入っていない状態だった。
「嘘だろ…こんな時に…!」
焦りが胸を締めつけた。すぐに逃げるべきか、それとも隠れるべきか。頭の中で次々と選択肢が浮かんでは消える。部屋の構造を思い出す。ドアを開けるとすぐにキッチンがあり、その先にもう一つのドアがある。今、侵入者は確実にそのあたりを歩いている。
「歩く音がしてる…こっちに近づいてる…どうする?逃げられるか?」
彼の頭の中で次の考えがひらめいた。
「能力を使うしかない…」
アカシは、自身のミクロ化能力を使う決意をした。これなら相手に気づかれることなく、様子を確認できるはずだ。
「よし…小さくなるぞ」
彼はすぐに自身を5センチのサイズに縮小させた。小さくなれば、侵入者に見つかりにくいはずだ。しかし、予想外の展開が待っていた。小さくなったアカシを、侵入者がすぐに発見してしまったのだ。
「なんだ…?小人…?」
その声にアカシは心臓が跳ね上がった。
「やばい、見つかった…!どうする…?」
だが、冷静さを失わないようにしなければならない。焦って行動を誤れば、さらに危険な状況に陥る可能性がある。まずは隠れる場所を探さなければ。彼は近くにあったゴミ箱の陰に素早く移動した。ゴミ箱の陰で、彼はさらにミクロ化能力を使い、ダニサイズまで縮小した。
「これならさすがに見つからないだろう…」
彼は胸をなでおろした。すると、侵入者の足音がゴミ箱のすぐそばまで迫ってきた。ゴミ箱が大きな音を立てて持ち上げられる。
「どうだ、見つかるか…?」
アカシは息を潜めた。ゴミ箱をどかした侵入者の顔が、すぐ目の前に現れる。その瞬間、アカシは思い出した。侵入者の顔は見覚えがあったのだ。帰り道の時辺りを何度も不審に見回していた、あの女性だ。
「この女…!」
彼女は明らかに何かを探している。顔が近づくにつれ、アカシはその巨大さに圧倒されていた。彼女の目だけでさえ、自分の体の何十倍もあり、目がキョロキョロと動いている。その鋭い視線が自分を見つけないよう、アカシは必死に静かにしていた。
「こ、こんなに近くで見ると、顔が…」
彼女はさらに顔を近づけてきた。その時、アカシは彼女の鼻息に巻き込まれ、まるで埃のように宙を舞ってしまった。
「うわっ、吸い込まれる…!」
彼女の鼻息に翻弄されながらも、アカシは何とか耐えた。ダニサイズまで縮小しているため、彼女はアカシを見つけることはできなかった。彼女は不思議そうに眉をひそめたが、やがて気のせいだと思ったのか、その場を離れて部屋の他の場所を探し始めた。
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