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#小説
ポーション・ウィスキーと苔玉の石ころ兵
夜の酒屋に僕以外の客はおらず、狭い店の棚にところ狭しに並べられた酒瓶の壁に少なからぬ圧迫感を感じて早足になる。低い天井の灯りが大小まちまちの酒瓶に、つるりん、つるりんと丸くひかって眩しく、僕の意識が宝石の箱に入り込んでしまったようにも錯覚する。
レジ前に腰掛けて本を読んでいた店主は僕が手にしたポーション・ウィスキーの瓶を見て「一六二〇円」とぼそりと云った。彼は僕より三〇くらい年上の男で、背の低
夜の酒屋に僕以外の客はおらず、狭い店の棚にところ狭しに並べられた酒瓶の壁に少なからぬ圧迫感を感じて早足になる。低い天井の灯りが大小まちまちの酒瓶に、つるりん、つるりんと丸くひかって眩しく、僕の意識が宝石の箱に入り込んでしまったようにも錯覚する。
レジ前に腰掛けて本を読んでいた店主は僕が手にしたポーション・ウィスキーの瓶を見て「一六二〇円」とぼそりと云った。彼は僕より三〇くらい年上の男で、背の低