#時代劇
三忍道中膝転げ 13(完)
「もし、翁様。戻らずとも良いですよ。」
三人が出て来た穴に戻ろうかとした時、女の声がそれを止めた。見れば白い着物を身に付けた少女が立っている。
「はあぁあ!おらぁ、もう嫌じゃの。」
「この城は尋常ではない者しか居らぬのか。また気付かんかったわい。」
「この世では無いのかもしれんな、この城は。」
白い着物の少女が微笑む。まだ幼さを残す顔立ちだが、淀とは違う妖しさにも見える唇の華は、人の心に
三忍道中膝転げ 12
「さて、どうするかだわい。」
「おらぁたちは忍びじゃあ。忍んで降りるしかなかろうよ、の?」
「羽は燃やされてしまった。それしか無いだろうな。」
三人は闇に紛れがら話している。忍びの声は他の者には聞き取れなくも出来る。人混みではこうやって意思の疎通を図るのだが、今回はいささか勝手が違う。
「ここから降りれんもんかのぅ。」
五助が廻縁(ベランダの様な部分)の高欄(手摺り)からひょいと顔を出す
三忍道中膝転げ 11
「火薬の匂い、、」
天守閣にて、隠し部屋へと繋がる梯子を見付けた服部半蔵は、中から香る僅かな匂いに気が付いていた。
「行くしかあるまい。あの茂平という男、何やら天下の大事に関わっていると見た。淀や秀頼よりも、更に深い闇に。」
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「分からんわい、、何処も何の変わり映えもせん。」
「んー、んー、、なあ、ねずみが鳴いとるの。」
「俺には聞こえん
三忍道中膝転げ 10
服部半蔵の目は天守閣の上で青く燃える火を見た。
あの青い火は燐だ。燐を使う者には心当たりがある。
甲賀忍び・猿飛佐助に違いない。佐助とは幾度もやり合ってきた。あの関ヶ原の影にも暗闘は有るのだ。
大戦さは一日で片が付いた。が、そこまでには忍びの働きがある。あの御披露目の様な戦さなぞ、比にもならぬ程の。力尽きた者は、侍より忍びの方が多いのではないか。
そう思えばこそ、半蔵の身体には力が漲った。