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【医師エッセイ】コロナ禍と不登校

コロナ禍における感染対策で、学校は分散登校、オンライン授業加えて運動会や修学旅行といったイベントさえも軒並み中止となりました。そのせいもあって、学校へ行こうというモチベーションを下げてしまう子どもも増えています。中には学校に楽しみを見いだせずに、不登校になる子も多数いました。
 そんな中でも知って頂きたいのが適応指導教室です。色んな理由で学校生活に適応できなかった子どもが、ここに登校しています。
 彼は人と関わるよりも、歴史の本を読んでいるのが好きでした。でも小学校のときは友だちがいました。みんなといるのは嫌いではなかったようです。でも人づきあいが苦手だったので、私立の中学校受験をして進学しました。中学はコロナ禍で学校はオンライン登校がほとんど。そんな毎日を過ごした後、コロナでの制限解除があったのですが、彼は学校に行けなくなってしました。
 学校の場所が遠かったのと、自分から話しかけるタイプではないので、友だちづくりができず孤立したからです。中学校2年生の秋に、出席日数が足りないので高等部への進学は難しいと言われました。そこで彼は公立中学校に転校しました。けれど、ここでも友だちはできません。1週間が過ぎると朝に起きられなくなり不登校となりました。
 高校には進学したい気持ちはあります。けれど、家から出られないのです。彼は一人悩み続け、誰にもわからないように手首を切るなど自らを傷つけるようになりました。
 それに気づいた両親が、彼に児童精神科を受診させ、中学校2年生の1月から適応指導教室に登校することになりました。週1日か週2日。それ以上は通えません。できれば家にいたい。1人なりたい。部屋に籠って寝ていたい。そんな彼をあの手この手を使って、引っ張り出していたような状況でした。
 ところが中学校3年生の5月に新しい生徒が適応指導教室にやってきました。彼の小学校からの同級生です。彼はおとなしく言い返したりしないので、いじめにあい不登校となりました。しかし学校に行かなくてはいけないことはわかっている。学校に行く前にはトイレに籠ったり頭痛や腹痛と闘ったりして登校していましたが、限界を迎えました。
 そんな2人が適応指導教室で再会し、お互いに元気になっていったのです。
「お前は人づきあいできないからさー」
「言い返さないからいじめられるんだよ!」
 我々が気を遣って言えないようなことを、面と向かって言い合っているのです。彼らは色々とLINEで話し合っていたようです。
 適応指導教室では、ほぼ一言も話せなかったような2人が、いきいきと過ごすようになりました。文章で書くと簡単に思えるかもしれません。人は人によって元気づけられる。彼らは通じ合う者に出会えたのです。
 2人は、学校見学に一緒に行くなど高校受験に向けてスタートを切り始めました。

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