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 私といかなごのくぎ煮の出会いは、2020年の春。ちょうど私が20年勤め上げた職場を辞職するときです。勤務先の業績がコロナ禍で悪化し、人間関係も悪化したためでした。時を同じくして、恩師も定年退職でこの仕事を辞めました。そんな恩師から、手紙と恩師の地元である岡山県のきび団子と、いかなごのくぎ煮が送ってきました。手紙にはご自身の現状と、私への想いが書かれていました。どうやら私の友人から、私が退職することで悩んでいるということを聞いたようです。恩師は朗らかな方でしたが、自分にも他人にも厳しいところがあり、周囲からの信頼も厚い方です。そのため、人よりも頼られることが多く、それはそれで大変だったとありました。
私はふと、恩師とのことを思い出しました。岡山弁が時折出る方で、私が泣きごとを言うと「ちょれー奴だな」と怒りながらも助けてくださったり、私がミスをすると「きーつけなあかんで」と、鬼のような形相で怒られたりしたものです。手紙の文末には、「人間、食べないことには前に進めない」と書かれていました。
食事もろくに取れていなかった私は、友人の助けもあって元気を取り戻し、少しずつ恩師から頂いたきび団子といかなごのくぎ煮を食べたのです。いかなごのくぎ煮の甘辛い味に恩師の思いを噛み締めながら、優しさと厳しさのある恩師そのものだと思いました。そうして私は、2020年夏には新しい職場で仕事を始め、波に乗ることができたのです。
2021年の春になり、恩師からは再び、きび団子といかなごのくぎ煮がタッパーに入れられて、ぎょーさん届けられました。恩師は気配りの人で、今はひっそり暮らしたいと言っています。ですが、それでも現場の人たちのことは心配していて、「今の私ではみんなを助けられないからな」と言っていますが、実際は今でもみんなから頼りにされているようです。私はコロナ禍が落ち着いたら、必ず挨拶に行きたいと思っています。

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