誰ひとり欠けてはいけない(存在の重みと愛おしさ)#吉川友梨ちゃん
もし自分の家族が突然居なくなったら?何の前触れもなく、あどけない笑顔を残したまま忽然と自分の前から消えてしまったら…
ただ単に一人の人間が物理的に居なくなったのではなく、帰りを待っている家族にとっては、世の中の全ての命が束になっても不在が埋められない➖自分の存在さえ揺らぎかねない大きすぎる悲しみと不安
大阪府熊取町の小学校4年生だった吉川友梨ちゃんが失踪してから、20年経った。当時の友梨ちゃんの学校の校長先生が、改めて力強く、心に迫るメッセージを出していた。
<2024年5月22日の日経新聞より>📰
『目の前の一人一人が大切な存在で、誰ひとり欠けてはいけないんだと思って欲しい』
(前校長吉田由美さん)
吉川友梨さん不明20年、「戻ってきて」前校長 大阪
関西
大阪府熊取町で2003年、小学4年の吉川友梨さん(現在29)が下校中に行方不明になった事件から20日で20年。友梨さんが通った町立北小では年に1回必ず授業で事件を取り上げる。児童らに事件について考えてもらうことが狙いで、計19年間勤務してきた前校長の吉田由美さん(65)は「みんなが戻ってきてと無事を願い続けてきた」と思いを込める。
「友梨がんばれ」。北小には時の児童や教職員らが数千羽の折り鶴をつなぎ合わせて作成した鶴文字が額に入れられ、今も残されている。2003年5月20日午後3時ごろ、遠足後の下校途中で行方が分からなくなった友梨さんの無事を願う北小のシンボルだ。
事件後は毎年、人権学習の授業の一環で友梨さんのことを取り上げてきた。吉田さんは、友梨さんや周囲の人の心境を想像しながら対話を重ねることで、児童らに事件を自分事として考えてもらいたいとして「目の前の一人一人がかけがえのない存在で、誰ひとり欠けてはいけないんだと思ってほしい」と話す。
教員はここ数年で友梨さんと同世代の人が増えており、吉田さんは「友梨さんは今、どんな大人になっているんだろう」と思いをはせる。今年3月末に校長を退任したが、在職中は新たに着任した教員に友梨さんや事件への思いを伝え続けてきた。
「戻ってきてほしい」。願いにも似たその思いは、授業を通してずっと引き継がれている。(共同)
<モノローグ>
初夏の日差しが眩しい。
通りすがりの公園には誰もいなかった。
それでも私には子どもの笑い声が聞こえた気がした。
小さな女の子が足をバタバタさせながら、両親の間で楽しそうに笑っている。
両親は子どもの頭ごしに目を合わせて、微笑み、女の子の顔を覗き込む。
女の子は、背中をのけぞらせて、ケラケラ笑いながら、何度も両親を呼ぶ。
(パパ)
(ママ)…
それに呼応するように
慈しみの名前が
名付けた者によって呼ばれる。
(友梨ちゃん)
(ゆりちゃん)…