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冷蔵庫を開けると 〜#おかしをくれたらおかえしするぞ xuさん企画
あれは、確か中学生くらいの夏。
夏休みの宿題を気持ちばかり進め、あとは何して過ごそうかと持て余し気味だった、ある日。
兄が突然、ゼリーの粉を買って来た。
いわゆる、
粉をぬるま湯で混ぜて冷やすだけ!
お手軽なのに、暇つぶしと冷たいオヤツに涼を得られる、優れものだ。
記憶が定かではないが、今だとこういうの。
これはいい!早速やろうと、取り掛かる。
出して来たのは、台所の中で1番デカいボール。
兄は、何箱も買ってきていた。
そう、そこにまさかの、全投入。
並々ギリギリセーフ!なぬるま湯でゆっくりかき混ぜる。
しかも、まだ余っていたので、次々とデカめの容器を見つけては注ぎ続けた。
ジューシーな香り。
夏の葉を透かしたような美しいメロン色。
気付けばテーブルいっぱいが、メロン色だった。
見たこともない光景に、ワクワクしながら、そっと冷蔵庫に詰め込んだ。
数時間後、出来上がった。
ボールから、好きなだけすくったゼリーの山は、至福だった。
1人分ずつ小分けにはしなかった。冷たいゼリーが喉を通り、皿に何度も大量にのせお腹を満たすまで食べた。
食べた。……食べた。食べ…減らないねぇ。
子供2人で、そんなにたくさんは食べられなかった。
また後で、また後で食べよう。
二日経っても、数箱分のゼリーは残っていた。
始めの嬉しさは、いつしか、若干ウンザリにかわっていた。
冷蔵庫を開けると、迫り来る、蛍光緑氷山
もう義務と化したゼリーを、半ば意地で2人で食べた。
冷蔵庫を開けると、減っていてくれ、蛍光緑氷山!
味変するなんて知恵は、なかった。
こんな風に。
それから、二度と我が家でゼリーが作られたことはなかった。
まずかったわけではない。嫌な記憶でもない。
むしろ、今では笑い話だ。
なんで、あんなにたくさんのゼリーを作ったのか、子供心に理解できなかったことを、大きくなってから兄に聞いたら、山岳部でみんなで食べたそれがあまりにも美味しくて、家でもやりたかったのだと。
何ごとにも、適量がある。
でも、冷蔵庫を開けたときの、あの緑に埋め尽くされた光景は、夏になると笑いと共によみがえる。
このエッセイは、フェスレポーターでご一緒したxuさんのこちらの企画に、のらせていただきました。
お忙しい中を、〆切日に滑り込み、ごめんなさい!
お引越し大変だけど、ご無理ないように。
て、私が遅くに書くなっていう。
楽しい企画を、ありがとうございました!