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人的資本を開示するだけじゃもったいない!開示のメリットを得るために人事がやるべき3つのこと

こんにちは!シンギュレイトnote編集部です。

人的資本情報の開示に向けた準備は進んでいますか?

2022年8月30日に国の非財務情報可視化研究会から、「人的資本可視化指針」が発表され、まさに開示に向けた取り組みを行っている企業も多いのではないでしょうか? 

人的資本情報は、求められている数値を集めて、ただ開示するだけでは、期待するメリットを得られない可能性が高いです。では、何をすれば企業にとっても良い効果のある情報開示ができるようになるのでしょうか?

人的資本の情報開示において「人事がするべき3つのこと」をシンギュレイト代表鹿内に聞きました。

京都大学などの研究機関の教員・研究員として、ヒトの脳(認知神経科学)の基礎研究に第一線で従事。その後、大手人材企業でピープルアナリティクスの事業開発に取り組む中、株式会社シンギュレイトを設立。”信頼”をキーワードに、人と人との新しい関係・関係性を作り、新結合(イノベーション)を増やすことを目指す。ピープルアナリティクスの技術、学術研究などの知見を活用し、イノベーティブな組織づくりを支援している。1on1での話し方・聴き方を可視化する1on1サポーター「Ando-san」、イノベーティブな組織への変革を促す組織診断「イノベーション・サーベイ」を提供中。情報量規準が好き、漫画好き、サッカー好き。
話し手:鹿内 学,博士(理学)シンギュレイト 代表

1.人的資本情報とは

まず、はじめに人的資本情報とは何か、簡単に振り返りましょう。

人的資本とは、モノやカネのように、人材が持つ能力を資本として捉える経済用語です。つまり、人的資本情報とは、企業が有する人材や、人材一人ひとりが持つ能力など、企業内の人材に関する情報全てのことを意味しています。

近年では、ESG投資の注目度上昇や、企業価値に占める無形資産の割合上昇、など市場環境に大きく変化しています。その結果、人的資本の重要性が増しており、企業競争力や企業価値の向上に欠かせない要素として考えられているのです。

こういった市場環境の中で国の非財務情報可視化研究会から発表されたのが「人的資本可視化指針」です。

本指針は、特に人的資本に関する情報開示の在り方に焦点を当てて、既存の基準やガイドラインの活用方法を含めた対応の方向性について包括的に整理した手引きとして編纂されており、企業が自社の業種やビジネスモデル・戦略に応じて積極的に活用することが推奨される。

引用:「人的資本可視化指針」非財務情報可視化研究会

上記のように人的資本可視化指針は、人的資本に関する情報開示の在り方を整理した手引書として発表されました。この人的資本可視化指針に沿って、人的資本情報を開示していくことが、日本企業に求められています。

2.人的資本の可視化・情報開示で求められていること

非財務情報可視化研究会では、人的資本を可視化する目的を以下のように掲げています。

人的資本を可視化する目的は、自社の人的資本への投資のインプット、アウトプット、アウトカムを分かりやすく伝えることを通じ、投資家をはじめとするステークホルダーによる自社の人材戦略への理解を深め、経営者・従業員・投資家等による相互理解の中で、戦略的な人的資本形成、ひいては中長期的な競争力強化や企業価値向上を実現することにある」

人的資本可視化指針 – 内閣官房 非財務情報可視化研究会(p.2)

つまり、人的資本の可視化を通して、企業価値を向上させることが国の狙いなのです。この目的からも、ただ情報を開示することだけが求められているのではないことがわかります。

国は、「人材戦略の説明と相互理解を通した、企業価値の向上」を求めているのです。

3.情報開示による企業にとってのメリット

では、人的資本情報の開示は企業にとって、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか?私たちは、大きく4つのメリットがあると考えています。

3-1.投資対象としての魅力を向上

企業が人的資本を重視していることを示し、投資対象としての魅力を向上させる」というメリットがあります。人的資本開示の大きな目的の1つである「投資家への人材戦略の説明」は、企業にとってそのままメリットになるでしょう。

3-2.採用競争力の向上

「自社の採用・育成方針をわかりやすく説明することで、採用競争力を高める」というメリットがあります。多くの求職者は、就職先を考えるにあたって、働く環境や待遇をできるだけ知りたいと考えています。その要望に、人的資本情報の開示によって答えましょう。

また、あらかじめ採用方針を公開しておくことで、方針とマッチした求職者の増加が期待できます。その結果、ミスマッチの少ない採用も期待でき、早期退職の低減にもつながるでしょう。

3-3.従業員エンゲージメントの向上

「自社の育成方針や人事戦略を示し、従業員エンゲージメントを高める」というメリットがあります。このように人的資本情報の開示は、社外だけではなく社内に対しても有効です。

「会社は、私たちをこんなふうに考えてくれていたんだ」
「私たち従業員を、こういうふうに育てて、企業として○○というビジョンを達成したいのか」

というように、自社の人事戦略を知って、理解してもらいましょう。ビジョンや従業員への想いが共有されることで、従業員エンゲージメントの向上が期待できます。

3-4.人事戦略・施策の強化

自社の人的資本の可視化によって、自社の人材や組織における強みや弱みが見えてきます。それによって、強みを活用する人事戦略や、弱点を補強する人事施策の立案が可能です。人的資本の可視化が結果として、人事戦略・施策の強化、そして企業価値向上につながっていくでしょう。


このように人的資本情報の開示には、企業・人事にとっても大きなメリットがあります。「やらなければいけないこと」ではなく、「進んでやるべきこと」として取り組みましょう。

4.メリットを得るために人事がすべき3つのこと

ただし、前章で示した4つのメリットは、ただ情報を開示するだけでは得られません。むしろ、開示した情報をもとに、企業価値が下がる解釈をされてしまう可能性も孕んでいます。そのような可能性を回避し、メリットを得るために、人事がすべきことが3つあります。

4-1.自社の人材・組織ビジョンを明確に示す

「人材や組織を将来どういう状態にしたいのか」ビジョンを明確に示しましょう。どこを目指しているのかわからなければ、開示された数値が良いのか悪いのか評価ができません。評価の基準となるビジョンも開示するようにしましょう。

また、人材・組織ビジョンと合わせて、企業の達成したい経営目標やビジョン・ミッションとのリンクを併せて説明すると良いでしょう。

4-2.ビジョンに対する現在地を示す

「目指すビジョンに対する現在地」を示しましょう。この現在地を示すことが、人的資本を可視化し開示することに当たります。組織や人材の状態を可視化し、わかりやすく伝えましょう。(可視化すべき情報は、また別の記事で紹介します!)

4-3.ビジョンを実現するための戦略を示す

現在地とビジョンの間にギャップがある場合は、ギャップを埋めてビジョンを実現するための道筋となる人事戦略を示しましょう。達成に向けた戦略の開示によって、ビジョン実現の信頼性を高めることができます。

5.まとめ

今回は、「人的資本を開示するだけじゃもったいない!メリットを得るために人事がやるべき3つのこと」と題して、人的資本の開示にあたって、人事がやるべきことをお伝えしました。

最後に整理しておきましょう。

  1. 自社の人材・組織ビジョンを明確に示す

  2. ビジョンに対する現在地を示す

  3. ビジョンを実現するための戦略を示す

この3つをやるために、最も重要なことは1のビジョンを示すことです。ビジョンがなければ、2も3も示すことができません。自社の経営目標から逆算し
て、組織・人材はどういう状態であるべきなのか、を明確にすることが大切です。


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