編集後記(「1番近いイタリア」2024年秋号より)
※こちらは「1番近いイタリア」2024年秋号の編集後記より抜粋です。
遠い父と母から、幼い私の写真が送られてくる。あと二十日後に迫る結婚式で、スライドショーを流せるように、頼んでおいたのだ。生まれた時の体重が書かれた新生児の私、初めて祖母が私を抱く姿、両親と両祖父母とのお宮参り、弟が生まれ、新築の我が家の玄関前で撮った幼稚園の制服姿の二人、お祭りの日の浴衣の二人、いとこ全員が並ぶ庭、幼稚園のお遊戯で人魚姫になる私、まだペダルの上に補助台のあるピアノの発表会、小学校の入学式の朝、中学校のソフト部のチームメイト集合写真、あっという間に高校の文化祭、大学の卒業式。写真が捉える私は、いつも弾けていた。春夏秋冬、その一時、一場面の中にある、あどけない、澄んだ笑顔には、温かい家族に見守られて育った証があった。健やかに育ちますように、という家族の願いそのままに、今日まで来られたことが奇跡のようであり、同時に、あらがいようのない時の儚さもまた真であった。
時は流れ、二〇二四年も秋は深まる。夢を追いかけて辿り着いたこの国で、新たな人生を歩み始めようとしている。未来への不安、理想、希望。今の心を覗くと、あらゆる感情が渦巻く。また一歩踏み出すのだと思うと、戻れない過去への寂しさや郷愁の念を感じないと言えば嘘になるけれど、それを上回る幸せで溢れる今と、まだ見ぬ未来への希望を思うと、心がいっぱいになる。過去の積み重ねの中に、やり残したことは一つもない。だからこそ、未来に進むことができる。幸せの延長に幸せがあると、純にそう信じて、決断した自分の胸に手を当てる。愛する人を思い、愛する人との未来を信じながら。時は一刻、一刻と近づいていくのだった。
さて、「一番近いイタリア」も今号で十九号。皆様に支えられてここまで来ました。これからも美味しさとドラマをお裾分けして、少しでも皆様の人生を豊かにできたらという思いで頑張ります。来号もお楽しみに!
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