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yumihinoue
2021年5月22日 16:57
静かな感動が全身にわきあがり、魂がふるえる。その瞬間に聞こえてくるのは、都市部で交わされる忙しいコミュニケーションのための言語ではなく、昔からひっそりと続いていた伝統儀式のあいさつのようでありながら、真実の断片がぽつりぽつりと蛍のような光りを放つ、おだやかで暖かくてやさしい言の葉。ずっとずっと前から憧れていた景色はここにあった、そう確信せずにはいられないほどイタリア語が圧倒的だと感じたのは、コ
2020年3月29日 16:43
朝、目が覚めるといつも、ここはいったいどこだろうと考える。長期滞在していたフランスでもスペインでもなく、イタリアへの旅行中でもない。視界の前にある天井を見てクローゼットを見ると、実家のある大阪でもなく、東京都心のちいさなわたしの部屋だ。その次に考える。いまはどの時間軸にいるだろう。曜日、時間、月、年。すこしずつ範囲を広げて記憶を取り戻していく。抱えていたタスクはなんだっただろう、やり残していた仕事
2020年2月13日 11:23
イタリアのミラノにあるサン・カルロ書店(旧・コルシア・ディ・セルヴィ書店)に訪れたときのことはいまでもはっきりと、覚えている。作家・エッセイスト須賀敦子の著書に登場するコルシア・ディ・セルヴィ書店。『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』など作品のなかで何度も舞台となったこの場所は、イタリアのミラノの中心部、ドゥオーモから歩いて10分程度のサン・カルロ教会の建物の右隣にひっそりとたたずん