クロエ

体験したこと、感じたことを小説形式で記録しておこうと思いました。一人の一度の人生ですが、毎日たくさんのことを感じて生きているのだと実感しました。書くことでより深い自分、より広い世界とつながれたら、と思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

クロエ

体験したこと、感じたことを小説形式で記録しておこうと思いました。一人の一度の人生ですが、毎日たくさんのことを感じて生きているのだと実感しました。書くことでより深い自分、より広い世界とつながれたら、と思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

最近の記事

スコープセレクター#MIZUKI

仕事の評価と人の価値 「深月さん、野川1丁目の戸建、買い取り決まりました!明日、契約です。」 「おめでとうございます。登記住所は変更ありませんか?今、法務局に棚野さんがいます。」 「お、良かった!変更なしです。建物はあるので、土地だけお願いします。建確書送ります」 「は~い。」 営業からのハイテンションな報告電話を切る。 法務局にいる棚野さんに電話して、今やっている図面づくりをあと15分で終わらせよう。昼休憩が終わるまでにはチラシの印刷を終わらせないと。 今月は

    • スコープセレクター#NOKATA

      両方にいい顔したい 歯ブラシを口にくわえたまま目の前の鏡を見て、片手で少し前髪を整える。少しずつ出勤前の時刻が進んでいく朝、気持ちは少し焦っている。 週に4日勤務しているアパレルショップへの出勤日。たかが4日とも言えるし、契約社員ではあるけれど今の私には大事なアイデンティティだ。 いつもは、早めに駅についてカフェでパンとカフェモカで朝食をとりながら、その日の予定を整理する。仕事にしっかり向き合えるテンションにあげて出勤し、たいていは一番最初にセキュリティを解除してショッ

      • スコープセレクター#NISHINA

        三崎との馴れ初め 仁科誠が三崎杏奈と初めて出会ったのは、彼が専門学校に通っていた頃のことだった。当時、造園の勉強をしていた彼は、カフェでアルバイトをしていた。場所は地元にあるカフェチェーンの一店舗。 ある日、季節キャンペーンの販促作業に本社から来た社員がいて、それが三崎杏奈だった。 特別な容姿というわけでも、仕草が派手なわけでもないが、7歳年上と納得させる落ち着きと目線に感じる意思の強さが印象的だった。 仁科がバイトしている2年間、ずっと三崎が広報担当だった。 キャンペー

        • スコープセレクター#NISHINA

          仕事終わり 6月の夜、気温26度。夜でも汗ばむくらいの気温だ。 仁科誠は仕事を終え、車の中で自分用の作業記録をつけていた。車の窓を全開にしているが、空気は重く、風もほとんどない。 でも、彼はこの時間に幸せを感じていた。 仕事中は、時間との勝負と全体を俯瞰しなければならない焦燥感に駆られた空白とのせめぎ合いだ。作業量も多く体力を消耗した後、自分のやった仕事を誰にも邪魔されず、じっくりと俯瞰して記録していく。 次にとりかかる時はこの意義ある記録をいかして、より良く仕上げて見せる

          スコープセレクター#MIZUKI

          ベランダからの花火鑑賞 10月に入ってから隣町で打ち上げる花火大会。毎年やっていて、子供の頃から親しんできた。 私は現在30歳。社会人7年目だ。 今日の花火大会は7年ぶりの鑑賞だ。今年の5月、人生初の一人暮らしを始めた。 最初は一人暮らしが寂しく、惨めな感じでコンプレックスがあり、周囲に内緒にしていた。なるべく充実していると思い込みたくて、頑張って自炊しておしゃれな食事をSNSにアップしたり、やたらにインテリア小物を買ってみたり。 でも、そのうち周囲への気兼ねをしなくて良い

          スコープセレクター#MIZUKI