『近代短歌論争史 昭和編』篠弘
戦前の昭和が主。明治大正編に続く書。同じく、近代短歌に関わる論争を網羅し、解説をくわえた書。主要なやり取りだけでなく、付随した論も網羅している。
「斎藤茂吉と太田水穂の〈病雁〉論争」など有名な論争も初めて読んだ。結構、些細なことで大変な論争をしている印象。歌人の人間くささが出ている。
篠弘の超人的な情報収集能力に敬意を表する。終章で「現代短歌の論争」として昭和50年(1975年)までを駆け足で辿っている。篠弘がこの論を終えた、75年~の論争史、ひいては短歌史は誰か書いているのだろうか。
1995年ぐらいからインターネットの浸透で、論争全てを網羅する、このような著書は事実上不可能になったと言えるだろう。
現状、75年~95年あたりの論争史があまり書かれていないのかもしれない。ひいては短歌史も。
角川書店 1981年7月 8500円