『現代短歌新聞』2023年3月号
①遠くより仰ぎてみれば光りつつ海は高きにあふれてゐたり 梶原さい子 震災から12年。その記憶を詠った一連。全ての苦しい記憶を超えて圧倒的に海は美しい。光る海を遠く見て、立ちつくす主体。他の歌との対比が一層自然の大きさを感じさせる。
②逢坂みずき「変わり続ける風景-3月11日に思うこと」
〈短歌は自分の人生の時間の錘になるだけでなく、変わりゆく街の時間の錘にも成り得るのだ。〉
地元・女川町のシンポジウムに写真家と共に登壇した作者。短歌は言葉で撮った写真ということもできるだろう。
③いくたびも思ひ出しゐる出来事はもう忘れたいとでもありて 斎藤梢 記憶の不思議なところだ。忘れたいことに限って何度も思い出す。けれど本当に忘れたいのだろうか。辛くても忘れたくない気持ちがどこかにあるからこそ消えていかない記憶なのかもしれない。
④「毎日芸術賞贈呈式」永田和宏『置行堀』で受賞。おめでとうございます。
受賞者挨拶から〈娘の永田紅が以前、歌を一首作ると人生の時間に錘がつくと言ったことがあったが、私がこれまでに作った六千首以上の一つひとつに錘がついている。それは特別な時間として自分のなかに残っている。こういう人生を送ってこられたことはとても幸せなことだったと思う。〉
短歌を作る者にとって励みになる言葉だ。時間に錘、は永田紅の言葉で、それをよく永田和宏が引用しているのですね。
2023.3.20.~21.Twitterより編集再掲