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「全領域異常解決室」の神々を解説!第9話(ネタバレあり)
いよいよ最終回目前となった全領域異常解決室。
今回は第9話で出てきた用語や神様を紹介していきます。
これまで出てきた用語や神様はこちら。
用語について
天之加久矢(あめのかくや)の矢じり
天之加久矢は、オオクニヌシ(大国主)の国譲りのお話で出てくる矢です。
天を治めていたアマテラスは、地上を治めるために使者を使わせることにしました。ところが、なかなかうまくいきません。
そんな中で3番目に使わしたのが、アメワカヒコでした。ところがアメワカヒコもまた、オオクニヌシの娘と結婚してしまい、天に戻らなかったのです。
そこで天から、様子をうかがうためにキジを使わします。ところが、アメワカヒコはそのキジを天之加久矢で射殺してしまったのです。
天之加久矢は天の神からいただいた大事な矢です。その矢はキジを貫き、そのまま天の神々のもとまで届きます。
天の神は「もしアメワカヒコが裏切っているのなら、この矢に当たれ!」と言って天之加久矢を放ちます。すると、天之加久矢はアメノワカヒコを貫いたのです。
ドラマの中では、神の命を奪う神器として出てきました。手に収まる小型の武器として、何か鋭いものを考えたときに、この天之加久矢の矢じりという設定を思いついたのでしょう。
古事記の中には人の命を奪えるようなものは多数出てきますが、名前のついているものの中で、小型のものはなかなかありません。天之加久矢も、矢のままでは目立ちますが、その矢じり、つまりその先端を加工したものだという設定にすれば、手に隠し持つこともできるということでしょう。
新たな神様
タケハヤスサノオノミコト(建速須佐之男命)
日本神話の中でも最も有名な神の一人でしょう。
古事記の中ではアマテラス・ツクヨミ・スサノオが同時に生まれます。(日本書紀の場合はそれにヒルコが加わります。)
そして、アマテラスの系統が天を治め、スサノオの系統が地上を治めるという構図が生まれます。
スサノオの子孫としてオオクニヌシ(大国主)がいます。オオクニヌシは地上を治めることになります。その後、地上をアマテラスの系統に譲り渡すのが、オオクニヌシの国譲りのお話です。
そんなスサノオの有名なお話が、「ヤマタノオロチ退治」と、オオクニヌシを試練で迎える「根の堅洲国(ねのかたすくに)訪問」です。
これらの話を知ると、屈強で力に満ちたスサノオ像が印象に残ります。
だからこそ、そのスサノオが現代においてどのような環境に生まれ、どのような扱いを受けているかを知ると、いっそう人間達への怒りがわいてくるわけです。
これは、比較的よく知られているスサノオの猛々しいキャラクターがあってこその演出ですよね。
ほかのゲームやアニメでは、きっと勇猛果敢で何者にも負けないようなスサノオのキャラクターが、このドラマでは覆されている。そこに第9話のおもしろさがあり、ヒルコの心情の理解にもつながっているわけです。
ちなみに、ドラマの中でスサノオが唱えている呪文は、ヤマタノオロチ退治の後にスサノオが詠んだ和歌がもとになっています。この和歌は最古の和歌とも言われています。
なお、スサノオに治癒の力があるという印象はありませんが、さまざまな神社で祀られている神様なので、そのどこかでは病気平癒やケガの治療にご利益があってもおかしくないですので、許容範囲でしょう。おそらく、物語展開上の設定だと思います。
ヒトコトヌシノカミ(一言主神)
登場する神々が神話の時代の神々なのに対し、このヒトコトヌシノカミだけが、神と人とが同時に存在していた時代のお話です。
おそらく、姿を変える力を持つ神が必要ということで、監修の方が提案されたのでしょう。無茶ぶりに素晴らしい機転で応えておられます。
時代は神話の時代からだいぶ下って雄略天皇の時代。
天皇が葛城山に登ったときに、雄略天皇一行と全く同じ姿をした一行と出くわします。それが実はヒトコトヌシノカミの一行だったのです。
雄略天皇が畏れ多く思って衣服を献上すると、一言主は喜んで見送るのでした。
この「天皇と全く同じ姿で現れた」という設定をうまく用いて、ドラマの演出に使ったのでしょうね。
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執筆者:古原大樹/1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。2024年に株式会社智秀館を設立。智秀館塾塾長。吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。古典を学ぶPodcast「吉村ジョナサンの高校古典講義」を公開中。学習書に『50分で読める高校古典文法』『10分で読める高校古典文法』『指導者のための小論文の教え方』がある。