見出し画像

『昨夜のカレー、明日のパン』

木皿泉の『昨夜(ゆうべ)のカレー、明日のパン』を読んだ。一気に読んだ。

ブックアンカーの利用者さんが希望された本だったが、その日の前に読み切ってしまった。

ブックアンカーで希望される本の多くは、読んだことのないものなので、当日に一緒に読み始めるまで、私も読んだことがないものが多い。

読んだことのないものの方が、余計な先入観がない状態で一緒に読んでいけるので、それはそれでいいと思っている。

けれど、冒頭を眺めただけで、ついつい読み進めてしまった。

「〈ムムム〉は、庭先で両足を踏ん張って空を見上げていた。両手の指で拳銃の形をつくると、それを高く突き上げ「バーン」と小さく叫んだ。」

木皿泉(2013)p9

なんにもわからないシチュエーションの中に、優しさがあふれている。

脚本家として知られるユニット、木皿泉による初の小説である。脚本家だからなのか、それとも夫婦ユニットの成せる業なのか、キャラクターと言葉に圧倒的な魅力がある。

映像化もされているようだが、これは小説としても味わっておきたい作品だ。


古原大樹/ブックアンカー
1984年山形県生まれ。山形大学教育学部、東京福祉大学心理学部を卒業。高校で国語教師を13年間務めた後、不登校専門塾や通信制高校、日本語学校、少年院などで働く。吉村ジョナサンの名前で作家・マルチアーティストとして文筆や表現活動を行う。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集