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音楽と文学 〜山下達郎〜

太陽か、月か
夏か、冬か
さて どっちだろう。

“ヤマタツ”の愛称で知られるシンガーソングライターの山下達郎さん。
1953年(昭和28年)生まれで今年72歳。巳年生まれの年男だそう。
1975年に5人組のポップスバンド シュガーベイブとしてデビュー、今年はデビューから50周年を迎えられるという。
シュガーベイブの頃のニックネームが  “クマ”だった。ゆえに、ヤマタツは 時にクマに扮することがある。

ボーカルはもちろん、ギター、ベース、ドラムス、キーボードなども操る。
CMソングや主題歌なども多く、みなさんも必ずどこかで耳にされているはず。
2016年には 楽曲『クリスマス・イブ』が30年連続オリコンチャート100位入りでギネス世界記録に認定されている。(現在では 39年連続チャートイン)

名曲があまりに多すぎて、「ヤマタツはどの曲が一番好き?」なんて聞かれても、いくつかに絞ることすら難しいからたぶん答えられない。


褪せない歌声と楽曲は、若い世代にも支持されてファン層もさらに広がっているそうで、ラジオ番組  TOKYO FM『山下達郎のサンデーソングブック』 (毎週日曜14:00-14:55) には、小学生からのお便りも来るというから驚き。
ミスドのCMでおなじみの『DONUT  SONGドーナツ・ソング』は小さなお子さまにも馴染みがあるかもしれない。



ライブチケットが入手困難なことでも有名で、当たればラッキーという感じ。
音楽通の友人からも、“ヤマタツのライブは一度でいいから行っておけ” と言われていたけれど、なんせチケットが取れない。
毎年ツアーで全国各地をまわられているけど、ドームなどの大規模な会場では行わないポリシーを ずっと貫かれている。
東京会場であるNHKホールの3,400席が最大だろうか。

ラッキーなことに、昨年12月5日の『PERFORMANCE 2024』東京公演に当選した。
ライブは お約束だという『SPARKLE』から始まって、盛り上がっていたのだけれど…
開始から一時間ほどのあたりで、突然このライブを中止することが ご本人から告げられた。

こんなこともあるんだな…。
なんだか今年はそんな年だな って ぼんやりと受け止めた。

お元気そうではあったのだけど、風邪の余韻か、このままでは 納得のいく歌声を最後まで届けられないと判断されてのことだった。
「若い時だったら このまま最後までやってしまうところなのですが…」そう言って会場のみんなへ詫びた。
その決断はとても勇気のいることだったと思う。

納得いくものを仕上げるこだわり。
納得のいくものを届けるこだわり。
妥協やごまかしはしない。作品にもファンにも真摯に向き合う。それはきっと、スタッフやバンドメンバー、そして自分自身に対しても同じ。
プロフェッショナルだなと思う。

ライブは順調に進んでいただけに、きっとみんな驚いて、頭の片隅で言葉を反芻していた。
状況を飲み込むと、客席からは「無理しないでー!」「ゆっくり休んでー!」「まってるぞー!」などあたたかい声が飛び交って 熱い拍手がわいた。
それはきっとファンだけじゃなくて、制作スタッフや関係者、バンドメンバーたちも同じ気持ちだったに違いない。
大切な人に無理をしてほしいとは誰も思わない。
文句を言う人なんて一人もいなかった。
愛だなあと思う。お互いがちゃんと向き合っている。許し合えるというのは そういうことだ。
細くて強い糸が無数に繋がっていて、それは繭糸のように 大切な人を守る。傷つくことがないように。


そんなこんなで、異例のライブ中での中止となった。
バンドメンバーからの提案で、でもせっかく12月だから…と、後半に予定されていた『クリスマス・イブ』が披露されて終演となった。

★雑踏の渦 きっと君は来ないって渋谷に歌う山下達郎

ちるnote『小鳥のようにうたいながら2024』
師走 December
より


きっと来ます…  だからぜひまた歌声を聴かせてください…
そんな思いで会場を後にした。


振替公演が行われるのかどうかは 確実ではなく、会場とメンバーの都合が合えば ということだった。叶わなければ払い戻しということになる。
その日のチケットはいつかの時のため、まだ新しくしたばかりだった手帳にしっかりと挟んだ。

クリスマスの少し前に振替公演のお知らせがきた。
公演日は年を跨ぐけれど それほど遠くはなかった。その日はすでに新年会の予定が入っていたけれどキャンセルさせてもらった。

そしてその日、またはじめから、やっぱりお約束の『SPARKLE』から ライブは始まった。
2024年のツアー43公演の千秋楽となるそのライブは、期待の上の上をいく素晴らしいもので、あぁ、来れてよかったなと思った。
けれど、あの日 何となしに会釈を交わしたお隣のご夫婦の席は最後まで空席で ちょっとさみしかった。
知らない方だけど、隣同士のご縁で  “よかったですね! ”って 気持ちを分かち合えたらよかった。

ヤマタツの歌声は、最初から最後までみずみずしい輝きを放っていた。




「“山下達郎”が 夏でも冬でもいける季語らしく…」
ライブの中でそんなトークがあって、帰って調べたら ほんとに夏の季語としても 冬の季語としても“山下達郎”は使えるらしい。
ちなみに、“サザン”は夏の季語で、“ユーミン”は冬の季語。なるほど。

ヤマタツの曲は、背景となる季節や時間帯がくっきりと鮮やかに描かれているものが多くて、たしかにどちらの季語でもいけそう。
夏か冬か…この意見は、もしかしたら世代や ファンになったきっかけの曲や年代などで割れるのかもしれない。

わたしの詠む短歌には 季語は必要ないのだけれど、俳句を詠まれる方はぜひお知りおきを。
そしてファンであられたら、 “山下達郎”  “ヤマタツ” で ぜひすてきな一句を。




シンガーソングライターといえば作詞も作曲もするわけで、その歌詞は 思いや感情を言葉で表現した芸術だから、やっぱり文学だなって思う。
歌詞にメロディが合わさると 歌になる。
そうか、言葉とメロディで歌になる、のか。
たとえばわたしの詩や物語でも歌になるのかな…。いえ 歌いませんよ、とても歌えませんけれどもね。
“作詞作曲”という言葉を見つけて、そんなことを考えていたら当たり前のことにちょっとハッとした、ただそれだけ。

音楽番組などで、作詞作曲は 歌詞が先か、曲が先か、なんてことがよく話題になっていたりするけれど、素人の考えでは 曲にあとから言葉を合わせるほうが難しそうな気がする。
決まっている形の中に 心情を言葉にして当てはめるいうことでは短歌もそうで、でもこれが大変に難しいわけで… たったの三十一音なのに。
ちょっとしたことで雰囲気やニュアンスが変わってしまうから気を使う。
一曲を仕上げるのにいったいどのくらいの時間が掛かるんだろう… すごい大変だろうなって思う。

そういえば、作詞は“七五調”や“五七調”を意識するって聞いたことがあったけど、それは昔の話なのかな。曲を単調にせずに味わいを出すなんて相当のワードセンスが必要だと思う。
童謡とかにはあるな… ほら、『うさぎとかめ』は七五調。
もしもしかめよ・かめさんよ
せかいのうちで・おまえほど
…なかなかそんなふうに簡単にうまくは当てはめられない。

メロディを譜面に起こしていく様子を想像してみると、作詞だけじゃなくて作曲もまた どこか文学みたいだな って思った。





山下達郎さんの奥様は、シンガーソングライターの竹内まりやさん で、今年デビュー45周年。
最近のシティポップブームで、過去の楽曲が海外でもまたブレイクしているらしい。
曲のアレンジとプロデュースは山下達郎さんが手掛けている。
おふたりがこれまでに二人三脚で積み上げてこられたものは、大きくて強くて、だれにも超えることも壊すこともできない。


昨年 10年ぶりとなるニューアルバム『Precious Days』を発売され、今年は11年ぶりのツアーも予定されている。
プロデューサーでもあるヤマタツは自ら宣伝活動も行う。
ライブの中でも まりやさんの大きなパネルを頭上に掲げ、CDやレコード、今年のツアーを熱くプロモーションした。
竹内まりやアリーナツアー2025のバックバンドも山下達郎ツアーメンバーと同じで、そのバンドマスターは山下さんがつとめる。
まりやさんのステージには必ずヤマタツが寄り添う。

互いを信頼して、尊敬して、思いを共有し、認め、そして応援する…
そんな理想的なパートナーであるおふたりに憧れるファンは多い。
プライベートでも ビジネスでも、夫婦であっても仲間であっても、長年うまく付き合っていくためには必要なこと。愛だなあとまた思う。

おふたりにとって2025年はアニバーサリーイヤー。
きっと、毎日がSpecialで Precious days になるはず。




ライブは振替公演だったし、千秋楽だったこともあって、これでもかというほどに盛りあげてくださった。
なんとアンコールでは、竹内まりやさんがサプライズ登場した。コーラスとして参加し、数曲が披露されて最後の最後までファンは沸いた。

こんなこともあるんだな…。
今年はそんな年だといいな ってぼんやりと思った。

ラストは、やさしいラブソング 『 YOUR EYES 』で 余韻に包まれながら3時間を超えたライブは終演となった。

ヤマタツのライブ会場で
まりやさんのレコードを買う
直筆サインと限定ステッカーもらった


ヤマタツ,みなさんも穏やかな休日のおともにいかがでしょうか。のんびりとドーナツでもかじりながら。

それでは どうぞ よい一日を、よい一週間を。



#189.    『 山下達郎   〜 ヘロン 〜    』

⭐︎そのままでいいよと言ってくれたから きみにヤマタツの『ヘロン』飛ばすよ

⭐︎アオサギが一本足で鳴いた朝 泣いたっていい雨だっていい

      ー ちる ー

おすすめのアルバム『Cozy』  (1998年)

収録曲の「ヘロン」 

“ヘロン”はheronで アオサギを指す
アオサギは朝を象徴する鳥
鳴きながら飛ぶと雨が降るという言い伝えがある

ゆるがずにじっと待つことのできる
忍耐や自立のシンボルともいわれている鳥


※ オフィシャルで公開されている曲がかなり限定的なので、『DONUT SONG』『YOUR EYES』『ヘロン』、その他は 検索をして聴いてみてください。

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