29才でもらったガンというギフト
社会人3年目の29才の時、人生を揺るがす出来事がありました。
医師から勧められて受けた血液検査で、ガン検査の陽性を申告されたのです。これまで超健康優良児で中高時代は皆勤賞を貰い、健康診断にも一度も引っかかったことのない私には、寝耳に水の出来事でした。
その時の私を襲ったのは、強烈な劣等感。仕事ができる・できない以前にガンになってしまう自分は、人間として劣っているのではないか。それも、自分の努力ではどうしようもない遺伝子レベルで。周りに知られるのが怖くて、家族や恋人、親友、上司など本当に近しい人以外にはとても話せませんでした。
その後、大きな病院で精密検査を受け、既に発症している部位があったことから3ヶ月後に入院し手術を受けることに。入院は約1か月。既に発症している箇所を順番に切除していくとのこと。体にメスを入れるなんて想像するだけでゾッとしました。
手術の前日に同意書にサインを求められます。「最悪の場合は肋骨を折ることになります」と言われて、思考が止まりました。肋骨を折る・・・??想像もつかないけれど、生きるために手術をしないという選択はなかった。前夜は不安な気持ちが拭えず、眠れない夜を過ごしました。
翌日朝、全身麻酔での手術となりました。意識があるまま目が覚めたらどうしよう・・・という恐怖で、腕に刺さった太い針から麻酔液が全身を巡るまで「まだ意識があります!」と半ば叫ぶように言い続けていたのは覚えています。
そして、目が覚めたら、ゾンビのような自分が待っていました。幸い肋骨は折らずに済んだのですがショックだったのは、自分の力で起き上がることもできなかったこと。手術時に腹筋を切っていたので当たり前だったのですが、あまりの衝撃で看護師さん達の前で子供みたいに泣きました。仕事を頑張るどころか、自分の体すら動かせない絶望感。「こんな辛いことが人生であっていいのか」「なんで私が?」という行き場のない怒りと衝動で涙が止まらなかった。その後も、補助がないと歩けない、鏡を見れば首に管が刺さって赤黒い血が流れるのが見え、全身が浮腫み、本当に憂鬱な毎日が続きました。
その後の病院生活は、まるで金魚鉢に入れられた金魚になった気分でした。毎日経過観察に訪れる先生に診てもらって、外出は範囲が決められて、面会時間も含めて自由を制限される。食事も時間も行動も、自分では決められない。外の世界にいる人達が眩しくて羨ましかった。退屈で長い長い病院生活を過ごして、やっと退院の日がやってきました。
この体験が私に教えてくれたのは、
「一瞬一瞬生きているありがたさを噛みしめる大切さ」。
毎朝目が覚めること、
自由に時間を使えること、
会いたい人に会いに行けること、
食べたいものを食べられること、
好きな人に好きと伝えられること。
病気にならなければ気付けなかった、当たり前の幸せ。
マインドフルネスを伝える上で、私が最も大切にしている考え方です。
ネガティブな経験として受け取ることもできたと思います。でも、私はタイトルの通り、大切なことに気づかせてくれた「ギフト」と捉えていきたい。正直、公開するのはかなり勇気がいりましたが、やっぱり私が自分の仕事を語る上で根底にある原体験だし、きっと同じ悩みを持つ誰かの希望になると思うから。
受け入れられない自分と決別するのでなく、手を繋いで生きていく。
私は私という人間を背負って、一生生きていくのだという覚悟もできた気がします。
「マインドフルネスを伝えていきたい」その気持ちの根底にあるのは、ストレスや病気の恐ろしさや辛さを間近で感じ見てきた経験。
そして、私も自分自身が「幸せに生きる」ために学び続けています。
日本人は2人に1人がガンにかかると言われているので、私の体験は決して他人事だと思って欲しくない。ストレスは万病の元、自分で自分のストレスマネジメントをきちんとして、ガンにならないリスク管理をしていくことが大切です。
医療現場やTOP企業でも採用されるマインドフルネスをもっと、身近にわかりやすく実践しやすい形でお伝えしていく。私は私の「ギフト」を生かして、これからも活動し続けたいと思います。