おうちで中華 - 大盤鶏(鶏肉とじゃが芋の麻辣煮)
【&Premium(2021年8月号)に掲載されたレシピです】
今回は、我が家の夏の定番料理。中国全土で高い知名度を誇る新疆ウイグル自治区の大盤鶏(鶏肉とじゃが芋の麻辣煮)だ。骨付き鶏肉やじゃが芋を香辛料で煮込み、ドドンと大皿(大盤)に盛り付ける豪快な料理である。
大盤鶏 大盘鸡
dàpán jī
唐辛子・花椒・八角・桂皮などの香辛料を効かせた、スパイシーな味付けが魅力だ。山盛りの大盤鶏が卓上に置かれると、刺激的な香りがぶわぶわと鼻をくすぐってきて、一気に食欲が高まる。
写真でも結構なボリュームだが、本場はこんなものではない。ウルムチで初めて食べたときは、明らかに5人前ほどの量が山盛りで出てきて、その迫力に思わず笑い出してしまったほどだ。
しかし、いざ食べ始めると、自分でも驚くほどの量を食べてしまう。歯ごたえの良い骨付き鶏肉。その旨味を吸ったじゃが芋と玉葱。パキッとした食感のピーマン。そして、皿全体をおおう麻辣の刺激が食欲ブースターだ。
うひょー、辛い!痺れる!って叫んでしまうくらい、しっかり麻辣を効かせるのがポイント。ビールを果てしなく呼び、食べるほどに食欲が高まる。ふと気づくと、いつの間にか皿の底が見えている。
実のところ、大盤鶏はウイグル族の伝統料理ではない。そもそもこの料理にはウイグル語の名前がないし、ウイグル族の店では大盤鶏を出さないところも少なくない。
では何かと言うと、新中国成立以降、大挙して新疆へ移住した漢族の食文化と、新疆の風土が出会って生まれた創作料理なのだ。
唐辛子と花椒を多用する点は四川料理の雰囲気が濃厚だが、湖南・甘粛・河南あたりの影響を指摘する声もある。いずれも、新疆への移民が多かった地域だ。その意味で、大盤鶏は新中国の移民政策が生んだ一皿だと言える。
現在の新疆でウイグル族が置かれた苦境を思うと複雑な気持ちになるが、異なる文化が交わるところには必ず新しい料理が生まれるということだ。
大盤鶏の成立時期には諸説あるが、1980~90年代とする説が有力だ。誕生からわずか数十年で新疆料理を代表する存在になったのは、何と言っても「旨いから」だと思う。
この旨さを、是非味わってみて欲しい。
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