胸糞悪い小説「坊っちゃん」
立て続けに日本の古典ばかり読んでいる。この本も20年くらい前に読んだはずだが中身をまるで覚えていなかった。もっとも普通は中学生くらいが読む本らしいので20年前に読んだってえらくもなんともないのだが。
読み終わった感想を率直に言えば胸糞悪い小説である。
主人公の俺は精神年齢が小学三年生で止まっている二十四歳である。これをして江戸っ子だの純情だの真っ直ぐだのさっぱりしてるだの公正だの正義だの言っているが結局のところ視野がやたらに狭いだけである。
胸糞悪いのは俺の中に自分自身を見てしまったからであって、俺があまりにも馬鹿なんだけどそれを笑い飛ばせないせいでもある。本人の行動はあまりにも軽はずみすぎるが、本人は至って善悪の区別がついていて自分が善であると信じて疑わない。だから坊っちゃんなのである。
世の中俺の考えるようになっていないのは当然で、漱石もだからせめて小説の中だけでも俺が勝つ物語を書きたいと思ったのかもしれないが結局俺を勝たせない結末を選んだ。例えばジルブラース物語はその俺が最後には勝ってしまう物語だけど、次第に成長していくジルブラースと違って坊っちゃんは一向成長する気配がないままに幕を閉じた。明るいように見えて実は暗い小説である。
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